専門委員及び事務局へのヒアリング

専門委員及び事務局へのヒアリング

磯崎:ありがとうございました。専門委員の先生方その後ずっとチェックされたと思いますが、この段階で我々議論に入るわけですが、その前に 特にこの辺のことは留意してほしいとか、こういう問題は是非議論にのせてほしいというようなコメントがありましたら今の段階で出していただけたらと思いま す。
澤井:それぞれ専門の立場から話させていただきますが、図書館の方ですが、建築的なものはあまり分かりませんが図書館の利用者、あるいは管 理するという立場から二・三の意見を述べさせていただきます。まず82番の提案ですが、公共図書館というのは子供から老人まで幅広い利用者層であると言う ところが他の図書館と大きく違う所でございます。今回のランダムアクセスというようなこと、この点につきましては本を見て絵を見て食事をするとかと、それ はいいことだと思いますが、今回のは複合施設だという各自が行きたい所へ行けばそれで済むということだと思います。資料を探す際にコンピューターの端末で 探して、借りた資料をどこでも戻していく、それでは次に来た人がコンピューターで検索して、それがどこに行っているか分からない、それが2層から9層まで 散らばっている場合、子供や老人がそれに合わせて動く必要がどこにあろうかと思います。資料の場合、月尾先生もおっしゃったのですが、メディアミックスと いう立場から見ると、本であれCD-ROMであれカセットであれビデオであれそれぞれの使い方によって生かされるという点がある訳ですから、メディアミッ クスで それがバラバラになってなくても1カ所で探せる方がいいのではないか、前提条件としてコンピューターが全て前提になっているので、コンピューターがダウン したらそれは動かないということになるし、開発にも問題がある。161番、これも利用の立場からですが、図書が3・4階となっているので、仙台市の泉図書 館の利用者が多い日には3000人以上来ておりますが、今回は複合施設ということで4000名位の利用者が見込めると思いますので、もう少しアクセスが良 ければよりいいのではないかと思います。バリアフリーということで、健常者とハンディキャップのある人を区別しないということで、ハンディキャップのある 人も自由にどこでも行けるというのは考慮されているのではないかと思います。管理の面からですが、階が分かれるには若干問題があるかなと思います。168 ですが、未来志向ということで、蔵書なき図書館とか電子出版とか、確かにアメリカでも図書館学の方でランカスターという人がペーパーレスライブラリーとい うことを大分前に発表しまして論議を起こしましたが、専門図書館とか学術図書館の場合であれば資料を電子化するということは予想出来ますが、公共図書館の 場合は小説とか文庫とか他のものがありますので、そういうものはどんなに進歩しても今後も残ると思うので、全てのものが電子化はないと思うので、スペース などの面で問題だと思います。
新田:ギャラリー部門の専門委員として見させていただきましたが、3案とも個性があってユニークな案だと思いました。メリットとデメリット もあるなとそれぞれに感じたのですが、82については、メディアとか機能とかを融合して使う等コンセプトとしては今までにない、ハードウエアの建築として はないことで大変面白いと思いました。また地域参加もうたわれていたので、その点大変興味深かったのですが、融合というコンセプト、ご本人は錯綜と名付け ておられますが、その概念はおそらく電子的なランダムアクセスの概念を非常にフィジカルなものにアナロジーとして映してくるということだと思いますが、現 実に図書が例えば一人の人が書いた本が各階に分散するということも起こり、その人の本を何冊かまとめてみたいというときはコンピューターで検索をして、そ れを集めて回ることになる。ランダムアクセスというのは電子的には一瞬で出来るわけですが、建物の中には身体の移動も伴い、それ自体が設計者の狙いでも あったと思うが、それが現実的な使われ方なのかと疑問を抱きます。それは、基本的に建物のバリアフリー性というものに関わってくると思います。これからは 単に身障者だけが車椅子に乗ってくる時代ではなくて、4人に1人が65才以上という高齢化社会であって、身体と建物の関係は今元気な人が考えているのと少 し違ってくるのではないかという気がしました。公共図書館はこれから高齢者の利用が増えるのではないかという気がしますので、素直に市民のコンセプトを受 け入れてもらえるのかということが少し気になりました。同じように錯綜という言葉で言えば図書部門もギャラリー部門も融合する、出たり入ったり出来る開放 的な考えで面白いのですが、不安な点はセキュリティーの問題がギャラリーで起こってくると思います。ギャラリーに来る人と、図書館に来る人が必ず同じ日に 両方使う訳ではないし、それぞれ違った目的を持ってくる、人数も日によって1桁位違う、その場合流動的な空間が図書館を利用する人がギャラリーを通過する といったことが起こった時にセキュリティーの問題が起こらないだろうか。空調の問題が起こらないだろうか。特に外国から美術品や文化財などを借りる場合に は、セキュリティーとか空調関係は非常に厳しくなりますので、その辺をどう処理するのかが少し心配になったのと、展示ギャラリーで言えば、縦長スペースが 各層に分かれることになるので、その場合、面的に使いたい空間とか、大容量の部屋がほしいといった時に問題が出てくると思います。161については階層は 固定的に使われて最初から計画されている、という意味では固定的かなという気がしました。階層ごとの使われ方というのは提案段階ではフレキシブルな形に なっているという点では、将来的には使い道について考えていく余地があるのかなという気がしました。本来であればこの種の文化施設はもう既に準備室が発足 していて発注者側がある程度の明確な管理運営のアウトラインを持っているのが望ましいのかなと思いますが、現段階ではまだそうではないようなので、168 の案のようにリジットに機能が最初から提案されているものよりは、これからみんなが意見を出し合って、各層ごとという形になってしまうかも知れませんが、 使い方を考えていく余地はあるかなと思いました。気になった点は、展示物の重量で石彫とか大変重い物とか大きな物があった時に、荷重が大丈夫であろうかと 言う点です。例えば1トンを越えるもの、2トン前後の彫刻などもあり得るので、今日のご提案では、荷重についてもきちんと説明されていたようですので、 場所を選べばいいのか分かりませんが、数値的な部分がどの様にクリアされるのかということです。ギャラリー部門をポンピドー的な使い方というか、オープン に作って区割りして使うという考えですが、ここのギャラリーは貸しギャラリーとしても使うという考え方もあり、その場合は半日、一日で入れ替えをすること が頻繁で、最初からパネルの組立をやっていると展示に2日から4日もかかってしまうので、ある程度区画された部分も必要になると思うし、企画展示室に関し ても、ある程度大きな壁面が固定的に必要な場合も出てくる。また、ガラスを使っているということで、遮光をどの程度きちんと出来るのか、あるいはガラス面 の外壁面に沿って遮光壁を作らなければならないこともあり得るのかなと、その場合建築家の方のコンセプトとうまく折り合って行けるのかが心配です。ワーク ショップのつながりで、オープンな展示室とワークショップが流動的につながっている様な設計になっていますが、それもある程度モノによっては区画して使う ということが必要になってくるのかなと思いました。伊東さんもおっしゃっておられた様に、これから作っていく段階で色々と考えて行けるんだというお話でし たので、そういう意味ではフレキシブルに施主側や実施に使っていく市民の声を吸い上げて、これから練り上げていく余地があるし、そういう面では現実的に 作っていけるプランではないかと思いました。もう1つ付け加えますと、1階部分は完全にオープンなスペースでいいのか、野外彫刻を置くスペースには丁度い いのかなと思いますが、ある程度透明性を確保した上で室内空間があって、そこにちょっとした企画ギャラリーとかショップとかがあって、市民が建物と親しん でいける接点があってもいい様な気がしました。168番ですが、外観もユニークですし、メディアフリークなと言っては失礼かも知れませんが、非常に熱心な 方が作ったのかなという印象を受けました。想定がリジットであるためにストーリーが固定しがちだなという気がし、出来た後にメディアテクノロジーの変化に 従ってストーリーの書き換えがうまくいくのかどうかということが少し気になりました。リジットに決めるということは、これから運営していく人達が実際に運 営していく段階でこうしたい、ああしたいということが出てくると思いますので、それと建築家の最初の提案とうまくすりあわせていける余地があるのか、その 辺が少し気になりました。以上です。
小野田:3案とも1階レベルをあけて2階以上にインフォメーションフロアがあるのですが、エントランスからインフォメーションフロアまでの 搬送システムというか1日に6千から1万人が利用する施設ですので、やはりエレベーターだけでは無理で、エスカレーターとかそういったものをかなり大胆に 入れ込んでやらないと難しいだろうと思います。そういうことを3案とも考えていくと、中空に浮いたような建物の雰囲気と、そういったものとの整合性がどの 程度取れるのか、それが3案に共通する1つの大きな問題だと思います。もう一つは特に82についてですが、余り運動論に過重な期待をするべきではないとい うか、問題は問題ですので、運動したからといってそう簡単に解決するものではないという風に僕自身は考えておりまして、建築と内容というのは不分離だと思 いますが、建築については仙台市の方も非常な理解を示して、枠組みでは誘導は可能なのですが、ランニングについて膨大なコストが予想される。例えば82に ついてはランダムアクセスをこのままやるとすれば書架ごとにOCRが必要になるとか、非常にメディア重装備を前提にしているわけで、イニシャルコストしか もかな り頻繁な整備点検とかが必要で、この手のものは、ランニングコストの投下が不十分だと、どんどん壊れて殆ど休業状態の機器ばかりになるという様な問題もあ ります。しかしながら仙台市内には他にも施設が沢山あり、ポンピドーのように国家的威信をかけてそれにソフトを含めて国が後押しするという性格を持ってい る訳ではないので、公共の投資としてこういう実験をこの規模で大々的にやることが適切かどうか問われると非常に答えにくい部分もあると思います。ある意味 で世の中の閉そく状況をこう言ったショック療法で変えていく、どんどん先へ進めていくというのはいつの時代も必要なことは充分認識していますが、それにし ても非常に恐いなというのが正直な気持ちです。161にしても問題がないわけではないですが、新しい可能性というか、これから議論していく上で改善はして いけるのかなと、ある意味では、我々が投げかけた新しい形のビルディングと言うことに対するこの程度の答でいいのかという事は若干思いますけど、我々特に 図書館などで話したのは、メディアの形態別ではなくて、メッセージの内容別に、図書館の配架などを変えていく事は出来ないか、今ですと映像は映像、 音は音、本は本と、メディアの形式別に分けられていますが、それをもっと内容別にシャッフル出来ないだろうかと、そういったことは出来るかなという様な気 はしています。
磯崎:ありがとうございました。事務局から一つだけ意見をお聞きしておいたらいいと思うのは、今の小野田さんのコメントにもありましたよう に、区レベルの図書館と全市レベルのギャラリー、全市的なレベルでのメディア、バリアフリーと、そういう形の施設である。それを一括してメディアテークと いう形で一つの空間に納める形になっている訳ですが、これを実際に運営、管理していくという段階になったときに、それぞれのサイドの学芸員、専門図書の専 門家、いろんな別な角度からの管理体制というのが考えられている。常識的に言うと別々のものに別々に対応して空間があれば区分所有のような形で実際に運営 は出来る訳ですが、今回のどの案も区分所有的なものは出来るだけ境界を取り払って、ひとまとめの、しかも内容的にも錯綜したものも考えながら運営していき たいと、こういう意向をそれぞれ皆持っていると。そういう形の提案が出てきたわけですが、その点について今後市の方でも、今までの常識的な管理体制をどこ かで変えていかないと、どの案にしてもうまくいかないであろうと思いますが、その辺の問題についてどういう可能性があるか見解を簡単にご説明頂けるといい んじゃないかと思いますが。
社会教育課長:実際の管理運営につきましては、今回の建築関係のプランが決まった後に、事業ソフトの検討予算がついておりますので、その中 で検討するようになると思います。特に4年後の完成時点を想定しますと、それぞれの社会教育施設における縦割的な管理運営形態というものはますますなく なっていく傾向にあるのではないかと考えています。あくまでもこのメディアテークの運営に関しましては、正式には市の首脳部会議等で決定されますが、可能 な限りここに入る4つの機能の施設が一体的な運営管理を出来るような組織体制、運営体制を確立して参りたいと思います。とは申しましても仙台市には条例も ございますし、条例の上には法律もございますので、どこまでできるか分かりませんが、可能な限り一つの母体による一つの運営形態を目指してまいりたいと考 えております。なお、今後ハード関係が決まりましたら市民や各団体のご意見を聞きながらそういった方策を探って参ります。
教育長:特に図書館については運営方法についてのさまざまな議論がありますが、市民に提供できる図書館サービスの向上という視点から、出来るだけ一本化していこうという方向で、その辺を今後は検討したいと思っております。

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