メディアテーク運営協議会報告書
3.マネジメント的側面

現状での課題

専門職員の人事交流がなく、一日13時間という開館時間の長さとそれがもたらす変則勤務、2階と7階に分散している窓口業務など、様々な状況が職務遂行上障害となっていることが職員のヒアリングから確認できた。またこうした余裕のない状況によって、スタッフのスキルアップや相互連携のための時間も十分確保できず、一部組織的な疲弊状態に陥っていた。

事業の項で掲げたような有機的なワークが持続可能となるためには、1)明確な組織ビジョンの提示と利用者や外部との協働・連携などの枠組みの再設定、2)広い業務範囲の連携をより合理的に展開するための業務構造の見直しや労働環境として持続可能性を確保するための内部組織の改革と人材養成、3)そうした組織が存立する基盤としての公的な評価とサポートの確立。といった三層での働きかけが不可欠である。

1)枠組み

①横断的ビジョン

メディアテークが持つ多種多様な機能や事業効果は、生涯学習や文化芸術に限らず、デザイン・コンテンツ産業のシーズシーズ新しい材料や技術、サービスの創出やジャズフェス・ページェントなど市民イベントの支援等、仙台市の重要施策のいくつかとも深く関連している。しかしそうした貢献は、多部局にまたがっているために効果としてまとまって認識されているわけではない。市の中での部署横断的な整理を行い、指定管理者制度の下でのメディアテークの目指す方針が何であるのか、設置者自身が明確にしていく必要がある。

②外部人材の活用

メディアテークが対処とすべき広範な範囲を内部のスタッフだけで賄おうとすることにはそもそも無理がある。外部との様々な関係の構築が不可欠なのである。大学や企業等との共同で行うコンソーシアムコンソーシアム複数の企業や団体がプロジェクト遂行のために作る連携組織。、個人的能力と関係を持つ客員研究員、教育的側面の強いインターン、受け入れのためのシステムが必要となるボランティア、様々な形が想定できよう。現状でもいくつか受け入れられているが、消耗を強いるボランティア的なサポートか形式的な委託かという役所的二元論はなかなか越えづらいようである。多様な関わり方、責任と尊重といった、外部の人材との創造的・互恵的な関係を定常的に構築できるシステムが不可欠であろう。

2)内部人材のインセンティブ

①意識

先述のように楽ではない職場であるにもかかわらず、職員のメディアテーク対する帰属意識は意外にも高い(スタッフワークショップ:第3回運営協議会)。その一方、施設目標の捉え方が「支援」と「創造」の二極に分離し、間にあるはずの市民との協働・合意形成に関する意識は希薄であるという問題も散見された。7階と2階のスタッフのあいだにある目的意識の微妙なずれも気になるところである。折角の高い帰属意識が十分に活かされていないのである。

②人材育成

そういったことを改善し、職員の意識を高め、モチベーションの維持のためには、適切な人材育成が必要と思われる。全スタッフがそろうゴールデンタイムの設定や業務合理化を通じたリフレッシュのための適切な休養の確保。また、スタッフの経験を積ませ、組織の新陳代謝を促すための他の機関・施設との人事交流や組織内での研修・考課システムなどは必須の与件である。

③ホスピタリティ

市民の自発的学びを支援するメディアテークにおいて、もてなし(ホスピタリティ)は重要な与件である。公募施設でもホスピタリティマネジメントがキーワードとなり、企業価値を高めるとともに施設の価値を高める例が増えている。これらは、スタッフひとりひとりが発想を転換しなければ到底転換しえない。この分野でノウハウを持っているホテルや教育産業が持つ仕組みを、共同事業などを通してどん欲に取り込むことも意識するべきであろう。

3)公的評価:数値目標から了解へ

メディアテークの事業評価については一般的な評価指標である来館者数の多寡などに加えて、施設利用者の体験の質も問うべきである。さらには、定性・定量的の両方にまたがる総合的な把握に加え、市民に対してメディアテークが実際に体現している価値の共有化を図っていく作業も欠かせない。

このように、多様な社会的ニーズにメディアテークの事業企画が対応するためには、内部の提案にたよる企画システムでは自ずと限界がある。全国的な優れた人材によるアドバイザリーボードを設け、事業コンセプトに沿った企画の立案や支援を行っていくこともまた重要であろう。ここでの創造的発意を学芸員が吸い上げることで、その理念を確実に実現していく仕組みをつくるべきである。

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せんだいメディアテーク
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