Two Years At Sea トゥー・イヤーズ・アット・シー

(ベン・リヴァース/2011年/イギリス/86分/HDCAM)

人里離れた森のなか、種々雑多な物が散らかった家でひとり暮らす男、ジェイク。雪の日も、霧の日も散歩に出かけ、くさはらや林で昼寝する。木の上に載せたキャンピング・トレーラーで、湖に浮かべた自家製ボートの上で、閑かなひとときを過ごす。これは、海での二年間の労働を経て実現した彼の夢。大きな粒子とノイズの疼くような揺らめき、闇と光が生み出す豊かなグレーのグラデーションがつくるひとつの世界。第68回ヴェネツィア国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した英国の映像作家ベン・リヴァースの初長編作品。

真昼の不思議な物体

(アピチャッポン・ウィーラセタクン/2000年/タイ/83分/35ミリフィルム)

都市から田舎まで、監督がタイ各地を訪れて出会った年齢も職業も異なる人たちが、物語をリレー形式で引き継いでつくっていく。語り手によって気ままに創作され、思いがけない方向に展開していく、「不思議な物体」をめぐるストーリー。ドキュメンタリーとフィクションが溶け合うことで、タイの人々の生活が記録されるとともに、彼らの意識の総体のようなものが、物語の形をとって浮かび上がる。タイ映画として初めてカンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)を受賞した『ブンミおじさん』などで知られるアピチャッポン・ウィーラセタクンの長編映画初監督作。

お葬式

(伊丹十三/1984年/日本/124分/35ミリフィルム)

俳優の夫婦、井上佗助と雨宮千鶴子は、CMの撮影中に千鶴子の父が亡くなったとの連絡を受ける。初めて喪主として葬式を出すことになった佗助は、何をしたらよいか分からず途方に暮れながらも、通夜、告別式、火葬と式を進めていく。お葬式という儀式、そこに集まって来る親戚や知り合いなど様々な人々の様子を、豊かなアイロニーを交えて映し出す。伊丹十三が、妻である女優・宮本信子の父親の葬儀で、実際に喪主を務めた経験をもとに脚本を書き、初めて監督した作品。

埋もれ木

(小栗康平/2005年/日本/93分/35ミリフィルム)

高校一年生のまちたち三人の女友達は、物語を交互に紡いでいく遊びを始める。この山あいの小さな町に住む大人たちも、それぞれの過去のエピソードや物語を持っている。あるとき、地中に埋もれて生き続けていた古代の樹木、「埋もれ木」が姿を現し、そこでカーニバルが開かれる。物語と現実が互いに呼応するように反射し合い、町の人たちの思いや記憶、夢が重なり合っていく。過去への感受性と未来への想像力を保ちながら、現在を生きる個人と共同体の関係性を見つめた小栗康平の美しい作品。

浮草

(小津安二郎/1959年/日本/119分/35ミリフィルム)

小さな港町に地方巡業の旅芸人一座がやってくる。座長の駒十郎は、この町に住んでいる昔の恋人・お芳とその息子・清のところに通うが、清は実の父である駒十郎が伯父だと聞かされている。一座でも駒十郎との仲が知られているすみ子は、嫉妬から妹分の加代を仕向けて清を誘惑させようとするが・・・ 画面のどこかに何らかの「赤」を配したことでも知られる宮川一夫の撮影や、中村鴈治郎と京マチ子が、大雨の中、小道を挟んで睨み合いながら嘲罵し合うシーンなど、特徴的な味わいどころがある小津映画。

*凡例(監督/製作年/製作国/作品時間/上映媒体)

トークイベント
門林岳史「ポストメディア時代の映像2 対話編」  The Images of Post Media Age 2

前回に引き続き「ポストメディア」を切り口に今日の映像について考察します。今回は映画上映プログラム「Image.Fukushima」を主催する映画批評家三浦哲哉さんを迎えて、映画上映の現在について語り合います。

日時
12月14日(土)20:00から
会場
1階クレプスキュールカフェ
料金
1000円 1ドリンク付き(アルコール類またはソフトドリンク+お菓子)
席数
30席(定数になり次第締め切り)

門林岳史(かどばやし・たけし)

1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。現在、関西大学文学部映像文化専修准教授。著書に『ホワッチャドゥーイン、マーシャル・マクルーハン?―――感性論的メディア論』(NTT出版、2009年)、訳書に『原子の光(影の光学)』(著:リピット水田尭、共訳:明知隼二、月曜社、2013年)がある。

三浦哲哉(みうら・てつや)

1976年福島県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。青山学院大学文学部比較芸術学科准教授。震災と原発事故をめぐる映画上映プロジェクト、Image.Fukushima実行委員会代表。著書に『サスペンス映画史』(みすず書房、2012年)、訳書に『ジム・ジャームッシュ・インタビューズ』(東邦出版、2006年)がある。