ラルジャン

(ロべール・ブレッソン/1983年/フランス/85分/35ミリフィルム)

知らずに贋金を使ってしまったことから犯罪の連鎖へと引きずり込まれていく青年の姿を辿る。金銭(ラルジャン)と暴力が支配する社会で、それによって狂わされながら抗う孤独な人間の生が、規則的なリズムにそった緊張感みなぎる画面展開によって、私たちの眼の前に提示される。ロシアの文豪トルストイの『にせ利札』を原作としたロベール・ブレッソンの遺作。

下女

(キム・ギヨン/1960年/韓国/108分/DVCAM)

音楽教師は越してきたばかりの新築の家で、妻、息子、娘と幸せに暮らしながら工場で合唱を教えていたが、彼にひそかに思いを寄せる女工の紹介でハウスメイドを雇ったことをきっかけに、そのブルジョア家庭もろとも劇的な破滅にいたる。50年代から90年代まで、30本以上の作品を監督した韓国映画界の鬼才キム・ギヨンの最高傑作。

階級関係―カフカ「アメリカ」より

(ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ/1984年/西ドイツ・フランス/127分/DVD)

フランツ・カフカの未完の長編小説『失踪者』(別題『アメリカ』)を、偉大なる政治的映画作家の夫婦ジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレが、原作への深い尊重とともに、大胆に異化し、映像化した。故郷のドイツを放逐され、単身新大陸アメリカに渡った青年カール・ロスマンが、異国の地を放浪しながら様々な状況で階級関係を体験する。
※無料上映(監督自身の監修によるオリジナル・マスターを使用したDVD上映)

国道20号線

(富田克也/2007年/日本/77分/DVCAM)

パチンコ店、消費者金融、郊外型ディスカウント店の林立する国道が走る町を舞台にした、元暴走族と元ヤンキーのカップルが過ごす現実。パチンコ屋から隣に並んだ消費者金融ATMに入っていく男を見かけたことから着想された。監督の富田克也は、土木建築作業員や移民労働者たちの姿を通し、日本の地方都市の現状を露わにした『サウダーヂ』(ナント三大陸映画祭グランプリ受賞)などで知られる。

わが町

(川島雄三/1956年/日本/98分/35ミリフィルム)(東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品)

明治末、フィリピンの道路建設工事に従事し、地元の大阪天王寺で「ベンゲットのターやん」と呼ばれ親しまれる佐渡島多吉(辰巳柳太郎)は、人力車を引きながら男手一つで娘と孫娘を育て上げる。織田作之助の同名小説を原作とし、明治から戦後まで、大阪下町の長屋で暮らす人々や風俗が活写される。多吉の妻と孫娘を南田洋子、隣に住む落語家を殿山泰司、床屋の女将を北林谷栄が演じる。

*凡例(監督/製作年/製作国/作品時間/上映媒体)