せんだいメディアテーク



メディアテークの日々の活動をお知らせします。

2008/02/23
伊藤トオル × 飯沢耕太郎 写真トーク

2月23日、土曜日、午後3時。鈍色の曇天から雪がちらつく生憎の天候。
「フォト・ゼミvol4.」が、せんだいメディアテーク6階ギャラリーの、「キヤノン写真新世紀2008」の会場内で開催されました。今年のフォト・ゼミは、在仙の写真家伊藤トオルさんと、日本を代表する写真評論家の飯沢耕太郎さんによるトーク・ショーです。
約10年前。伊藤さんが写真新世紀の賞を受賞したのは、大好きな写真家の一人である森山大道氏選の優秀賞(写真集名は『De Construct』)からで、翌年には第一作目の世界を広げ『De ConstructⅡ』で佳作(年間特別賞)を受賞。当時は、「脳で撮るのではなく、網膜で撮る。」を文字通り実践。反復していく撮影の面白さを本にまとめたいと思っていた時期だったそうで、前半のトークは、その受賞の前後に発刊した写真集2冊についてお聞きすることができました。大好きな中上健次氏に憧れ撮ったという『KUMANO』(洋々社、1995年:テキストは飯沢耕太郎氏)。沖縄のプリミティブな情景を纏めた『夏芙蓉-okinawa2003』(蒼穹舎、2004年)等、写真集作成時の苦労や楽しさ等をお話いただきました。
また、後半のトークは昨今の『仙台コレクションVol.1』(2005年)、『仙台コレクションVol.2』(2007年)というプロジェクトの内容で、話は、フランスの伝説的な写真家「ウジェーヌ・アジェ」のエピソードにも及び、集った写真好きの聴衆は興味深い眼差しで、プロジェクターに映し出される仙台コレクションの膨大な作品群に見入っていました。
さらに近作の「島へ」(プロローグ編)からは、写真でしか出来ない表現に正面から取り組んで来た伊藤さんの真摯な内面が窺えます。そして最後に「ぼくにとって離島というのは孤独さのイメージ。しかし孤独さに溺れないというか、孤独さも飼いならし共存していく楽しさもあるのではないかと思う。」と言葉を締めると、会場からは大きな拍手が起こりました。
さらに、キヤノン写真新世紀の審査員でもある飯沢耕太郎さんは、「今年は準グランプリ受賞に3人。キヤノン写真新世紀も10年前とは格段のレベルの向上を感じるが、なんとなく群を抜く劇的な作家、作品が出にくくなっているともいえる。今年は、キヤノン写真新世紀の審査会場で、驚く様な優秀な作品に出会いたいと思いますので、どんどんご応募ください。」と締めくくられました。
伊藤さんの受賞から約10年。最初の作品集 『De Construct』(脱構築)にも象徴的な言葉でもあるように、一見、全て均質で平均的な世界観に包まれていますが、何時の時代にもその先の新しい表現は必ず生まれるという飯沢氏の心強いことばが印象的でした。
この日、会場は計500人以上の観覧者の熱気が渦巻き、写真新世紀にとっても、smt写真講座としても意義深い一日となりました。

(Lee)

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  • 2008/02/23
    手前が伊藤トオルさん、奥が飯沢耕太郎さん

  • 2008/02/23
    『De Construct』表紙




  • 2008/02/23
    『De Construct』

  • 2008/02/23
    『KUMANO』(洋々社、1995年:テキストは飯沢耕太郎氏)

  • 2008/02/23
    『仙台コレクションVol.2』

  • 2008/02/23
    「島へ」

  • 2008/02/23
    『夏芙蓉-okinawa2003』(蒼穹舎、2004年)

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