全館再開のお知らせ

せんだいメディアテーク



せんだいメディアテークをもっとよく知るためのさまざまな情報を、副館長の佐藤泰がお届けします。

67「仙台らしさ」

今からもう15年以上前のことです。メディアテークの建設を進めているさなか、伊東豊雄氏をはじめ設計事務所のなかでは、仙台市の担当者がたびたび口にする「仙台らしさ」「仙台ならでは」という言葉に、神経をとがらせる場面が少なからずあったそうです。その担当者は他でもない、設計競技の立ち上げから担当してきた私自身ですが、そのことをある種の驚きとともに知ったのはだいぶ後になってからでした。私としては、メディアテークにオリジナルで発信力のあるソフトをいかに組み込むか、そしてそのソフトに持続性と発展性を担保する資源をいかに足下から供給できるかを考えていたにすぎなかったのですが、今思えば私の発言は表現のつたなさもあって、従来の公共施設によく見られるような、建築意匠の中に郷土をモチーフとする表現を求める類いのことと、とらえられてしまったのかもしれません。
開館して13年、メディアテークはたくさんの人で賑わう国際的な建築物として今や仙台の観光資源のひとつとなり、もはやそれ自体が「仙台らしさ」を表現する存在となっています。もちろんそれだけでもすばらしい成果ではあるのですが、それに頼り、ただ消費し続けるだけだとしたら、先祖代々の遺産を食いつぶす放蕩息子と同じになってしまいます。「もの」である以上、メディアテークはいずれ壊れ、消えます。そのときに、仙台はメディアテークを通じてどんな人を育て、どんな文化を生み出してきたか、それをどれだけの誇りを持って言えるかどうか。そこで仙台が世界に向けて明言できることこそが、メディアテークにおける本当の「仙台らしさ」ということになるのかもしれません。
さて、メールニュースのコラムとして長らく続けてきた「ひと言メモ」。1994年以来メディアテークにかかわり続けてきた私から、みなさんにお伝えしたいことを少しずつ書いてきましたが、私自身の定年退職を機にひと区切りとさせていただきます。まだまだ言葉足らずのことばかりですが、とにもかくにもメディアテークという場が、ただ消費される財産としてだけでなく、常に新しい可能性に開かれ、新しい価値を創造できる場として機能し続けてほしいとの切なる願いをこめつつ、ひとまず筆を置きます。
拙筆におつきあいいただきありがとうございました。

(2013/02/28)


  • 2012年暮れ、メディアテーク屋上から南東方向を望む
    2012年暮れ、メディアテーク屋上から南東方向を望む

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