せんだいメディアテーク



せんだいメディアテークをもっとよく知るためのさまざまな情報を、副館長の佐藤泰がお届けします。

38「ホームレス」

さまざまな原因によって生活の拠点を失ってしまった人びとにとって、公園や施設など公共の空間は生きるために残された数少ない拠り所となります。特に公共図書館は、無料で快適に長時間滞在でき、本やビデオなどの情報や地域への接点も用意されているため、経済的障害を負ったホームレスの人だけでなく、さまざまな障害を持って生活する人びとにとっても、専門の福祉施設とは違う大きなメリットがあるようです。しかし、本来多くの人が共有すべき空間を個人が自らの生活のために占有してしまうことや、困窮した生活による身なりの汚れが公共の環境を壊してしまうことへの抵抗もあり、図書館にかぎらずホ ームレスの人の公共空間利用についてはさまざまに意見が分かれるところです。
この問題に関する先進国?でもあるアメリカでは、ホームレス排除につながる図書館利用規則への訴訟が行われる一方で、図書館自体が福祉部門と連携してそうした人びとへの情報支援プログラムに積極的に乗り出す事例もあります。日本では現時点でアメリカのような目立った動きはありませんが、限られた社会資源を今生きる人びとのために最大限活用していくために、一方的な占有や排除に頼ることなく、ほどよいバランスをもって公的財産を共有していくためのリテラシーを育てあっていくことは必要でしょう。10才になったメディアテークも、そろそろこうした問題にきちんと向き合っていけるようにならなければなりません。

(2010/08/01)


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