せんだいメディアテークをもっとよく知るためのさまざまな情報を、副館長の佐藤泰がお届けします。
56「壁に穴あり」
「壁に耳あり」の話ではありません、ギャラリーの展示壁に無数にあいた小さな穴のことです。開館以来11年間、ほとんど休みなく使われてきたメディアテークのギャラリー壁面には、作品を固定するためのピンや釘が打たれた跡が残されてきました。貸しギャラリーでもあり、原則は壁の上端に設けたピクチャーレールからワイヤーとフックを使って展示することを想定していますが、より自由な展示空間を実現するために、開けた穴を自ら補修していただくことを条件に、直接ピンを打つことを認めているからです。壁の色をもっとも単純な白にしているのは、誰でも容易に部分補修ができるためでもあります。しかし自ら補修するとはいっても実際には難しく、メディアテークのスタッフがさらに補修作業をおこなってもなかなかもどらないのが実情です。しかも1~2週間単位で展示がかわる貸ギャラリーの壁の消耗は、最短でも1~2カ月単位でしか展示が変わらない美術館と比べると少なくとも4倍以上の速度で進むので、壁の傷みは4~50年経過した美術館にも相当すると言えます。壁と同様、展示による加工が可能な床の消耗も同様で、本来ならすぐにも全面的な改修が必要ですが、昨今の財政事情から見ても優先順位は低くならざるをえません。したがって当面は、ギャラリーの利用ルールの一部見直しや、大型企画での長期使用の促進などを含め、少しでも消耗の速度を遅くするための対策でしのいでいくほかありません。
(2012/04/01)
立体物の壁面固定や、上下に作品を展示するときはピン打ちが不可欠。
6階ギャラリーの使用例より