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せんだいメディアテーク
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電話 022-713-3171
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架空の郷土芸能はアーカイブされるのか? 写真

アーティストならば誰もがそうだろうが、自分のアイデアがいつか世界を変えると信じている・・とはいえ、よくもこんなヘンな企画をやらせてくれたものだと実は驚いている。現在 smtで進行中の「架空の郷土芸能つくりますワークショップ」だ。

その名の通り、仙台由来の(しかし架空の!)伝統芸能を考案するというプロジェクトだが、そこには厳密なルールがある。ある種の数学的な「規則」によって人間がその場で判断できるような行為を規定する。その行為が何らかの演奏やパフォーマンスとして成立するように工夫する。そして、それらにまつわる固有の「由来」を考える(でっちあげる)。そして、実際に訓練してやってみる!・・これがぼくが「逆シミュレーション音楽」と呼んでいる試みである。

経験も専門も異なるワークショップ参加者とは既に、「由来」を考えるために仙台の名所旧跡に遠足に行ったり、三進法の計算を連鎖させて行う「規則」のコンピュータ・シミュレーションを行ったりと、このプロジェクトは現在実に楽しく進行している。しかし楽しいことだけがプロジェクトの目的ではない。「メディアテーク」という言葉に象徴されているように、あらゆる情報が記号化されデジタル・データとして一元的に管理され、ぼくらの知識やそして感情までもがそれらに拘束されてしまっている現在、一見「すずめ踊り」の楽しい振り付けを考えるようにさえ聞こえるこのプロジェクトは様々な疑問をぼくらに突きつけてくるはずだ。

来年1月のワークショップ最終発表の際にぼくらは多数のパフォーマー達が汗をかきながら無心に何かをしている姿を見るだろう。しかしこのパフォーマンスのおおもとには通常考えられている意味でのひとかけらの精神性も正統性もなく、ただ数学的なルールによって事前にコンピュータでシミュレートされた動きが人間達によって展開されていくだけである。しかし、それでもぼくらは必ず何かを感じるはずだ。だとしたらそれは何なのだろう? 人が汗をかいて奏でた「音楽」のデータは CDやネット上のファイルという形でいつでも手に入れることができる。このプロジェクトは汗をかきながらまさにその逆を試みようとする営為なのだ。このような試みが他ならぬ「メディアテーク」という場所で行われることに格別の意味をぼくは感じている。