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せんだいメディアテーク
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ハイカラ空間写真

「カメラ(camera)」「キャップ(cap)」「カセット(cassette)」「キャパシティ(capacity)」。「ca」の書き方にもいろいろあるようだ(太字はアクセント)。発音による決まりがあるようなないような、時代による違いだろうか。理由を考えると夜も眠れない。いや考えてはならない。カタカナの外来語は発音を表現したものだが、すべての発音をカタカナで書くなんて本来不可能だ。表記に揺らぎが起こるものやむを得ない。対する日本人は、時には「ヴ」や「ェ」といった新しい文字を発明して、不可能に挑戦してきた。でも「ヴ」の発音はどうでもよいらしく、とにかくカタカナで書きたいのだと見える。

本をつくる際、「ー」「ヴ」などの用法を決めるのがふつうである。しかし、私が制作にかかわった本だけを見ても、この決まりはさまざま。著者、内容、読者層、見た目なんかが決まりに大きく左右する。 そうしてメディア別に決まりが出来る。新聞社や通信社は、外来語の表記則・用例をこと細かに定めている。私は共同通信社の用例を参照することが多い。新聞の場合、ベッカムの奥さんは「ビクトリア」。本や雑誌、広告などでは「ヴィクトリア」も多い。でも例外は必ずある。大新聞でさえ「東京ヴ(ェルディ)」は「東京ベ」とは書けない。そんなの格好悪い。外人は良くて日本人は駄目なのか。

smtの室名や印刷物では大新聞型が採用となった。例えば、「ヴ」はすべての世代が理解するとは限らないので用いない。

情報処理用語や事務機器名称はJISが規格化しており、「スーパコンピュータ」「レーザプリンタ」など、英単語末尾の曖昧母音に「ー」を付けないことや、「ディジタル(digital)」など、大新聞型より元の発音に近い表記を採用している。しかし、smtにパソコンがたくさんあるとはいえ、一部の言葉だけこの考え方を採用するのは例外や混乱を増やすだけだと考えた。「カウンター」を「カウンタ」にできるだろうか。「メディア」は?

インターネットには、今やIT情報も新聞も学術論文も個人の日記もある。表記則は当然ばらばらで、さてどうやって検索したものか。googleで試すと、何と、ヴィクトリアとビクトリアは同一人物。素晴らしい。しかしヴィルトールとビルトールはまったく別人。数々の検索システムが、こういう揺らぎに対応する日がいつか来るだろうか。もし来るならば、稲本のいる「フルハム」と「フラム」も同じチームにしてほしい。いやまてよ、最新の日本語フォントはユニコードに対応し、日本語なのに、英語のabcやロシア語のАБВのみならず、ドイツ語やフランス語も表現可能だ。いっそのこと、外来語はアルファベットで書こうか。