2016年04月11日更新

「メディアテークから考えるこれからのアート」シンポジウム開催の報告


せんだいメディアテークは平成27年度に、文化芸術の創造性により、若い世代やまちの魅力を引き出し、仙台および東北の復興を図ることを目的とし、人材育成事業と国際的・先進的なアート事業について、その方向性や手法の検討会を行ってきました。その締め括りとなるシンポジウムが「メディアテークから考えるこれからのアート」と題され、今年1月23日に同館で開催されました。

IMG_9688-3.jpg

まずゲストであるアートディレクターの北川フラムさんとアーティストのやなぎみわさんに、それぞれ、これまで手掛けてこられた芸術祭や作品や公演についてのプレゼンテーションを行っていただきました。北川さんは「瀬戸内国際芸術祭」や「大地の芸術祭」について話され、「芸術祭でプロジェクトを進めいていく過程ではコミュニティの付き合いが重要。アートがそのコミュニティの持つ資源を明らかにしていく。」とご自身の経験のお話をされました。続くやなぎさんは、表現形式(形態)を写真から演劇公演に移行した経緯などについて、参考映像を紹介上映しながら解説され、「演劇は声や身体が、失われた記憶や場所とつながる手段になる。また、写真は世界の見方を提示することで人と世界の関係を世に問うための手段となり、コミュニケーションを巻き起こすことができる。アートはつながるための手立てを持っているのです。」と述べられました。

kitagawa.small-1.jpg

5D3L9795-2.jpg 

メディアテーク側からの提案として、仙台市におけるアートの可能性やこれからの課題、そして今後取り組むアーティストによるリサーチを主体としたプロジェクトについての考え方を発表し、パネラーやその場の参加者から、様々な意見をいただきました。

芸術祭については「開催している3ヶ月の期間よりも作品制作の1000日の期間の方が大事。芸術祭は人々のあいだに縁(えにし)を紡ぎ出していくことが本当の目的である。」という意見や、「作家を大勢招聘すれば良いという問題ではなく、一人一人が芸術祭においてどういうインパクトを持ち得るかということにつきる」という意見等が出ました。

また、「仙台は東北の入り口とも思える。震災後、東北の問題にもっと向き合っていくべき。」や「東北は(文化的にも)いままだ発見されていない金脈(文化資源)がありそれを引き出したい。言い換えると東北をカミングアウトさせていきたい。」等、活発な意見交換の場となり、時間を30分延長しての終了となりました。

最後に当館の鷲田清一館長は、「はじまりはどうなるかわからないものを、様々な立場や感じ方の人々が一緒にひとつのものを作っていくことにもアートの力がある。また、獰猛さと緻密さを持つアーティストたちに触発され協働していくことは、社会課題に向き合う姿勢とつながる。つまりアートこそ市民力の育成にとって一番大事なモデルになる。」という言葉で締めくくられました。この日、参加者は市民ら合わせて約220人が集い、仙台のこれからのアート事業についての関心の高さをうかがわせるシンポジウムとなりました。

5D3L0078-4.jpg


x facebook Youtube