せんだいメディアテーク

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せんだいメディアテークのアーカイブは、メディアテークを媒介とした市民のみなさまの参加・協働による地域文化の創造・発信の記録と成果を紹介するものです。

 

レポート

鷲田清一館長・随行録 – 2013年10月17日

「宮城野区文化センター開館1周年 みんなで 聴きたい 語りたい」

レポート:佐藤泰

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10月17日、宮城野区文化センター開館1周年事業として、「みんなで 聴きたい 語りたい せんだいメディアテーク鷲田清一館長とともに」が開催された。折しもこの時間は、このセンターからほんの1㎞強の距離にあるクリネックススタジアム宮城で、楽天イーグルスが田中投手をたて、日本シリーズ進出をかけた試合が行われていたが、会場には熱心な参加者が集まっていた。

はじめに、進行役の吉田祐也さんから、きょうの趣旨が述べられる。住民の力で被災者支援や復興への取り組みを進めてきたが、たくさんの人が力を合わせなければ乗り越えることのできないこの事態のなかで、悩みや戸惑いの連続でもあった。そんななかで鷲田さんが震災直後に大阪大学の卒業式式辞やメディアテークの再開講演で話してくれたことに、とても勇気づけられた。きょうは、宮城野区文化センター開館1周年を記念する催しのひとつとして、震災以降わたしたちが取り組んできた活動をふりかえりながら、鷲田館長とともに、これからのことをみんなで語り合う場にしたいと呼びかけた。

口火は鷲田館長からの講話によってきられた。宮城野の被災地を訪問して、あらためて被災が生み出す格差に、いたたまれなさを感じるとともに、復興をめざして活動する人々の力に感銘を受けたこと、阪神大震災を経ることで、日本の社会にはボランティアや市民活動が浸透し「ケアの文化」が育ったといえるが、今回の震災で、ハード面の復興以上に、たとえば格差という問題にどう向き合うか、あるいは東北という地域性やその文化をどう活かしていくかなどの取り組みなどを通じて、なにか新しい方法がここで生み出され、これからの日本を支える力として育つことを願っていると述べた。短いが、自身の実体験をも織り込んだ血の通った話は、聞く人ひとりひとりを勇気づけるものだった。

続いて吉田祐也さんからの活動報告。震災前から続けてきたサーフィンやライフセービングの活動がきっかけとなり、それが震災後、チェーンソーアーチストの協力により大量の流木を自分たちで処理する活動につながって、さらにそれが地域のお祭りの復活に展開する一方で、そこでの地域の繋がりがより幅広い復興への活動に広がっていったのだそうだ。それらの活動がどれほど強力な復興の力となったか計り知れないが、そこに悲壮感は感じられなかった。どんな状況であっても、スポーツ、アート、祭り、子供たちなど、人々が自然に集まり楽しむことが介在することの大切さをあらためて教えられる。

伊藤み弥さんからは、音楽の力による復興センターの活動が紹介された。震災直後の3月26日にお寺で仙台フィルによるコンサートが行われたの皮切りに、地元演奏家はもとより、世界各地からたくさんの演奏家が被災地に訪れ、被災者のための演奏会を行ってきたこと、そのなかで、高名な演奏者が惜しげもなく演奏を披露してくれたことのすばらしさだけでなく、演奏者も聴衆も同じ被災者であることには特別の意味があったこと、聞き慣れたメロディーが人の心をほどき、歌うことで力がでてくることなどが語られた。自身は演劇の演出をやってきたものの音楽については専門家ではないことを明かしつつ、活動を通じて、「人の心にきざすもの」を育てる意味を学んだとも述べた。

会場からは、震災前から子供たちに太鼓を教えていた二瓶徹さんの発言があった。震災後に子供たちから太鼓をやりたいと言われ、夏祭りに向けて練習の再開を決意したこと、これからを担う子供たちに、私たちの文化を伝え、大人の姿をきちんと示していきたいことなどを述べた。そのほかにも、震災後立ち上がった「新しいイナカを作ろう」の活動などの紹介もあったが、そのための十分な時間がとれなかったのは残念だった。

最後に鷲田館長はふたつのことを話した。ひとつは二瓶さんの子供たちへの思いを受けたもの。右肩あがりがしみつくと人は未来を案じなくなり、高度成長の中では荒っぽい仕事が横行した。それに対して、百年後を想像して仕事をするという石積み港の職人に宮本常一が真の職人の矜持を見たように、子供たちの未来を想像することは、私たちの有り様を鍛えることに繋がること。そしてもうひとつは、復興に限らず、まちづくりをすることはさまざまな傷を伴うものであり、誰か専門家に任せておけばよいのではないこと、他に本業を持つ人々がお互いに力を出し合い、傷をケアしながら進む「しんがりの思想」、フォロワーシップを育てていく必要があること。

一方的に話すのではない、語り合いを場をめざす会ではあったが、壇上の3人の話を聴くうちにあっというまに予定の時間が過ぎてしまった。今回を1回目として、このような会をこれからも続けていくこと約して終了した。