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smtガイドボランティアによるレポート (2006.11.25)

11月25日(土)、Re:search展の内覧会が行われた。
Re:search展とは、日豪交流年記念事業の一環として、日本とオーストラリアで活躍するアーティストが、仙台で滞在制作した作品を発表する展覧会である。
この日は、アーティストやオーストラリア公館の来賓など関係者約100名に対し、会期に先駆けて作品が公開された。

会場は、白い壁に囲まれた無機質な空間で、まるで異世界に入り込んでしまったような錯覚に陥る。
しかし、そこに展示されている作品には確実に"仙台"が入り込んでいた。

平川紀道の「GLOBAL BEARING」では自らの手を動かすことにより、普段の生活では気づかない"仙台"と世界、宇宙との距離を感じることが出来る。目の回る様な感覚にその大きさを知る。
アレックス・デイビスの「conversations」は"仙台"の人々の表情を見せる。それは決して笑顔ではなく、疑うような表情。心の中まで透き通って見えるようだ。
志賀理江子の「角隠し」からは"仙台"の匂いを感じた。匂いというより臭い(におい)かもしれない。作品から漂う妖しさにグッと惹きつけられる。
クレイグ・ウォルシュは「BIG IN JAPAN」の中に"仙台"の街を映し出す。持ち帰ることが出来るポケットティッシュの中に埋め込まれている"仙台"の街は、小さく、安っぽい。どこか寂しさを覚えるものだった。
ヘインズ/ヒンターディングは「Electromagnetique Composition for Building, Plants and Stars,2006」で"仙台"にある電磁波の存在を視覚と聴覚で訴える。常に身の回りにある、逆らうことの出来ない力に押しつぶされそうな感じがした。
The SINE WAVE ORCHESTRAの「The SINE WAVE ORCHESTRA mediate」は自らが演奏に参加し、作品の一部となれるのが楽しい。また、展示の中を歩いていると、定禅寺通の樹々の間を歩いているようで心が落ち着くのだった。

ところで、"Re:search"とはどんな意味だろうか。
辞書を引いてみると、"re"は「あとに、再び」と記されていた。
そして、"search"には「調べる、捜す」の他に、次のように書かれていた。
「(気持ち、反応を知るため)じっと見つめる」
「(記憶などを)たぐる、たどる」
「(光風寒さなどが)(場所に)すみずみまで入り込む」
「(事実、情報を)(調査、探索などによって)発見する、探し出す、暴露する」(プログレッシブ英和中辞典より)

会場の最後にある平川紀道の「compath」の展示空間に体を置いてみる。
生まれてから仙台に住んでいるが、"仙台"の空をこんなに長い時間眺めていたことがあっただろうか。
記憶を辿り、じっと心の中を見つめてみる。
すると"仙台"にもっと深く関わり、より多くのことを知りたいと思う自分がいた。
それは新たな発見だった。

Re:search展には単に見るだけではなく、鑑賞者が操り、参加し、心を揺れ動かす作品がたくさんある。
その中で誰しもがいつもとは違った"仙台"の姿を感じ取り、新たな感情を生み出すことが出来るだろう。
内覧会を鑑賞して、これは仙台に住む人間にこそ体験して欲しい世界だと思った。

Re:search オーストラリアと日本のアート・コラボレーション
6fギャラリー4200 2006年11月26日(日)〜12月25日(月)
<文 ガイドボランティア 笠松 恵美子>