せんだいアートアニュアル2003

New Styleキューブらんこ

【写真】作品画像

作家

平田洋章

材質

鉄、角パイプ・チェーン・木

作品説明

高度成長期に幼少を過ごした私の身近な遊び場として公園は特別な存在だった。良くも悪くも無邪気にはしゃぎ悩みや不安もなく遊べた場所は私にとって思い出の宝庫だった。特に「ぶらんこ」は1人で乗り、空や風と対話しながらいろいろなことを考えられる癒しの乗り物だった。そんな思い出を呼び起こし、気軽に自宅の部屋で自分だけの特別な空間を過ごすための装置、それが「New Style キューブらんこ」である。立方体に囲まれた空間は自分だけの犯されない領域、そして天井の低い集合住宅でも使えるよう全高を抑えながらも通常のぶらんこのような振り子機構を持たせたトリプルサスペンションを採用した。人間は快適と先進を求め、欲望が満足されると、それとは逆の不便さや刺激を求めるものだ。時を越えて朽ち果てた座板に座り過ごす空間は時間に追われ複雑な現代社会とはかけ離れた単純で何も求めない癒しの特等席なのである。ぶらんこに触れて育った世代の違ったそれぞれの人が、この席に座って個々の違った思い出を回想してもらえたら幸いである。