対話の可能性

(ヤン・シュヴァンクマイエル/1983年/チェコスロヴァキア/12分/35ミリフィルム)

「永遠の対話」「情熱的な対話」「不毛な対話」の3部構成の短編アニメーション。野菜、台所用品、文房具、ハブラシ、靴、粘土など、身の周りの日用品を素材として用いながら、人間社会の「対話」の様相を批判的に捉える。その実験的な手法でストップ・モーション(コマ撮り)の可能性を広げたアニメーション史的にも極めて重要な作品。

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか

(スタンリー・キューブリック/1964年/アメリカ・イギリス/95分/Blu-ray)

米ソ冷戦下、米空軍の司令官が独断でソ連の核基地の爆撃指令を出す。米大統領、政府や軍の首脳部、ソ連大使らが事態の収拾をめぐってあがくさまを、痛烈なブラック・ユーモアをもって描き切る。英国空軍大佐、米大統領、そして大統領科学顧問ストレンジラヴ博士の三役を演じたピーター・セラーズの怪演が際立つ。

フルスタリョフ、車を!

(アレクセイ・ゲルマン/1998年/フランス・ロシア/142分/35ミリフィルム)

スターリン体制下のソ連、赤軍の少将でありモスクワの病院の脳外科医であるクレンスキーは、KGBによる反ユダヤ主義の計画「医師団陰謀事件」に巻き込まれる。逃亡を試みるも逮捕され、拷問を受け、収容所に送られるとすぐに釈放され、連れて来られた別荘の部屋で彼が見たものは・・・。何が起こっているのか分からずに見る悪夢のように映し出される、スターリン時代の心理。

豚と軍艦

(今村昌平/1961年/日本/108分/35ミリフィルム)

戦後の横須賀で、米軍基地の残飯を使った豚の大量飼育で儲けようと企てる連中がいる。恋人の春子と幸せに暮らしたいと夢見ながら、欲にかられ、周りに翻弄される飼育係のチンピラ男・欣太と、この町を憎み、欣太と激しくぶつかり会いながら、二人でまっとうに生きたいと望む春子。敗戦後、社会の底辺で生き抜く人間たちを、今村昌平が重厚に、生々しく、そして諧謔精神を貫いて描いた傑作。

眠れぬ夜の仕事図鑑

(ニコラウス・ゲイハルター/2011年/オーストリア/94分/ Blu-ray)

「夜の方がよりはっきりと見えることがある」。国境警備、病院、郵便仕分け、自殺防止ホットライン、欧州議会、夜ミサ、オクトーバーフェスト、性産業・・・。夜のヨーロッパで人々の活動を描写し、現代文明社会の縮図を浮き彫りにする。監督のニコラウス・ゲイハルターは、チェルノブイリ原子力発電所から4キロの街をとらえた『プリピャチ』(1999)や、現代の食料生産現場を見つめた「食」のドキュメンタリー『いのちの食べかた』(2005)などで知られる。

*凡例(監督/製作年/製作国/作品時間/上映媒体)

トークイベント
門林岳史「ポストメディア時代の映像」

YouTubeやスマートフォンの極小の映像から、シネマコンプレックスでの3D映像経験や巨大な街頭スクリーンまで、今日私たちの生活世界を覆う映像という夢/霧をめぐって、ポストメディアという視点から考察する。

日時
8月10日(土)19:00~(開場は18時30分から)
会場
1階クレプスキュールカフェ
料金
1000円 1ドリンク付き(アルコール類またはソフトドリンク+お菓子)
席数
30席(定数になり次第締め切り)

門林岳史(かどばやし・たけし)

1974年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。 現在、関西大学文学部映像文化専修准教授。 著書に『ホワッチャドゥーイン、マーシャル・マクルーハン?―――感性論的メディア論』(NTT出版、2009年)、訳書に『原子の光(影の光学)』(著:リピット水田尭、共訳:明知隼二、月曜社、2013年)がある。