活版印刷ワークショップ

smtデザイン講座 活版印刷 ワークショップ 活動記録

活版days vol.4 活版サテライト

「活版days vol.4 活版サテライト」ムービー
6月14日、15日に行われた
「活版days vol.4 活版サテライト」の動画を公開しています。
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 前日の6月14日(土)午前8時43分頃に、岩手県内陸部を震源とする強い地震があり、岩手・宮城で震度6強の揺れを観測。朝の開館を目前にした、せんだいメディアテークでも強い揺れを感じました。しかし、チューブと呼ばれる柱部分や、当館の地下1階部分(丁度印刷工房の中)には巨大地震時のエネルギーを吸収する機構が組み込まれており、<詳細はメディアテークひと言メモ「no.12 地震対策」を参照>大きな被害はありませんでしたが、午前中は点検の為、館のエレベーターが全て停止したままであったり、県内の公共交通機関に影響が出たりと終日地震の影響を受けた日となりました。
 明けて6月15日(日)。小さな余震は続いていましたが、せんだいメディアテーク7階スタジオa活版サテライト内で、活版印刷ワークショップが開催されました。今回のワークショップは地下階を離れ、陽の光が燦々と降り注ぐ7階の「活版サテライト」と名付けられたスタジオaでの開催です。

 「活版サテライト」展示は活版印刷の歴史や世界観、理論と実践をできるだけコンパクトな形で展示する目的で企画。普段はメディアテークの地下にある巨大なプラタン印刷機や活字の納められてきた「馬」という棚を使わずとも簡単に活版印刷の楽しさやすばらしさを体験してもらうという趣旨で展示されています。
 構成は6つのパート(1.みつけましょう 2.うえましょう 3.すりましょう A.PRESS! PRESS!! PRESS!!! B.仙台と活版 C.日本でははじめて!?)からなり、1~3のパートは活版の実践的な部分、活字や印刷機、道具の本物を展示してあります。またA~Cのパートは日本や仙台での活版の歴史を知る上での貴重な書籍やリーフレット、また活版で製作された作品などが展示されています。

 午後2時。このワークショップとサテライトの監修者でもあり、前長岡造形大学教授の小泉均(こいずみ・ひとし)さんhttp://www.htypo.net/blog/の説明がはじまると、高い倍率の中当選され集った参加者の皆さんは、はじめてさわる活版印刷の道具にドキドキしながらも、熱心に仕組や方法を聞き入っていらっしゃいました。

 今回は、サイズが1号(正方形の一辺が10mm)の活字と4号(正方形の一辺が5mm)の活字を利用して、「ごあいさつ」と「自分の名前」の二つのパラグラフ(段落)部分を組み替えて印刷してみるというもので、大変シンプルなトレーニングではありますが、実際には文字の隙間が大きくなって活字が抜けてしまうこともあり、完成までには少なからず苦労が伴います。デジタルな印刷方法では決して味わえない、なつかしさともどかしさを感じる一瞬。例えば少しの隙間(0.5mmくらい)が空いてしまう場合には紙(普通のコピー紙)を隙間に詰めて、バランスをとります。逆にうまく収まらない不具合の元を探っていくと案外ホコリや小さなゴミが版を組む邪魔をしていたりするのです。そんな場合、活版のボランティアの方はなめらかさを感じる為には指で触ってみることだとお話しされます。人間の指は数値でおきかえることの出来ない、計り知れないすばらしさを持っているのでしょう。
 指先で拾い上げくみ上げていく活字について。小泉氏は「読んでその字のとおり活きた字だから、カツジなんですよ!」とお話されます。普段はあまり意識することのない「指先の小宇宙」を体験できる、楽しくて為になるワークショップとなったようです。

 また、最後に、話し手小泉均さん、聞き手小出尚喜さんによるタイポグラフィ・カフェと名付けたトークショーが開催されました。このカフェスタイルのイベントは今年から始まった7階スタジオでのイベント計画の一環で、スタジオを使って行われる様々な展示やワークショップ、レクチャーに付随したカフェを、カフェ研究会の協力により開催するもので、今回のタイポグラフィ・カフェは第一回目となりました。
 お話は、小泉さんが、我が子のように思っていたadana社製の印刷機をsmtへ寄贈したこと、それを記念しての活版のミニ展示で、6枚のパネルに活版の基礎の全てがまとめられていること、また、スイス・デザインの本拠地でもあるバーゼルで学んだ懐かしい日々のこと、師匠のことなど、参加された小学生の皆さんにもわかるように、優しく語りかけていらっしゃっいました。ワークショップの最後に、今回参加していた永作太一(10歳)くんは、傷の入った活字しかなくて、刷り上がりに今ひとつ納得がいかなかった様でしたが、小泉さんに「傷が入っているからこそ、世界にひとつしか無い、君だけの作品になったね」と話しかけられて、満面の笑みを浮かべていた姿が印象的でした。


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