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せんだいメディアテーク
980-0821
仙台市青葉区春日町2-1
電話 022-713-3171
ファックス 022-713-4482
office@smt.city.sendai.jp
http://www.smt.jp/

 

審査写真

2月のはじめ、せんだいメディアテークにはじめて行った。開館一周年記念シンポジウムで司会をするためである。登壇者は、新しいコンセプトでこの建物を造った建築家の伊東豊雄さんと、中身のプロデュースをした東京芸術大学の桂英史さんである。 メディアテークを訪れてまず思ったことは、外観が思ったよりもずっとオーソドックスな感じだったということだ。

しかし屋内に入ってみると、伊東さんが設計された空間は明るさと軽みがあった。高校生がケータイをかけていたり、お年寄りがもぐもぐとお弁当を食べていたりと、気楽な街角のような感じがした。これまでの公共施設の堅苦しさはなく、僕にとっては居心地がよかった。 しかしこれにはシンポジウムのなかで、会場から異論もでた。図書館などの公共の場で、私語をしたり、ケータイをかけたりなんてとんでもない。もっとまじめにやるべきじゃないか、というものだ。僕のように、いつもメディアに囲まれ、ざわざわした都市空間に慣れている者にはよいのだが、なるほどこれまでの公共施設の約束事に慣れた人々からはそのような意見も出る。日本の公共空間の意味と身体感覚を変えるには時間がかかるということだろう。 シンポジウムでの議論は、地元市民がメディアテークをいかに自律的に運営していくかということが中心だった。この新しい公共空間をお上が押しつけたもの、東京発のハイカラなものではなく、どのようにして自分たちのものに組み替えていけるか。そのためには文化論だけではなくお金も重要な問題だ。 僕は仙台の人たちがうらやましかった。smtが街の歴史や、サイズに見合った空間になっているからである。市民のメディア活動を可能にする技術は、今日たくさんある。しかしそれを下支えするのに適当な空間は、そんなにはない。みんな公民館や、大学の狭い教室でごまかしているのだ。と同時に注文もある。シンパシーを込めて2つをあげておきたい。

第1に、smtでおこなわれているワークショップのたぐいがちょっとハイソ過ぎやしないかという点だ。横文字の、アート系のものに片寄っている。図書館や映像施設を活用したどこの公民館ででもおこない得るような、基本的で、日常的なテーマの活動も、地道に展開してもらいたい。

第2に、これは仙台の他の公共的なセクターに対するお願いだ。たとえば仙台にたくさんある大学は、smtをどのくらい認知し、活用したり連携しようとしたりしているのか。新聞社やテレビ局といったマスメディアはどのくらい関心を持っているのか。現状では物足りなさを感じる。地域の文化を育むには、大学やマスメディアなど伝統のある公共機関こそが、smtに積極的に働きかけていくべきだ。 smtが日常に根ざし、ゆっくりと市民のメディア活動を活性化し、仙台のまちを変えていく。それはとても愉快なことだと思う。サポーターとして、じっくりと見守らせていただきたい。