参加者の感想

写真のワークショップに参加するのが好きだ。
写真を撮る時は、ひとりのほうがいい。横に誰かがいると気が散ってしまう。
だけどいったん写真を撮ってしまうと、それをひとりで眺めているだけではおもしろくない。かならず誰かに自分の撮った写真を見せたくなる。それはきっと、写真というものがほんらい他人に何かを伝えるための道具でもあるということによるのだろう。
「フォト・ゼミ」に参加するにあたって、ぼくは写真について何かを教えてもらおうとか、写真のテクニックを向上させようとかは、いっさい考えなかった。ただ単に、自分の写真を講師や参加者の人たちに見てもらい、言葉を交わしたりするのは楽しいことだから参加したのだった。他人の写真もただそれだけを見るよりは、それを撮った人がどんな人なのかを目の当たりにすると、実に興味深い。そういう機会はワークショップにしかない。講師の小林のりおさんが言っていたことは要するに「写真は教わるものじゃない」「写真に関する古くさい価値観は壊したほうが面白い写真を撮れるよ」ということだというふうに、ぼくは理解した。ぼくをふくめてデジタルカメラで写真を撮っている参加者のだれよりも、きっと飯沢耕太郎さんのデジタル写真(飯沢さんの言葉でいうとデジグラフィ)への確信が強いだろうということも印象的だった。
とにかく今デジタル写真を作品として扱う事にもっとも先鋭的な作家と評論家の2人が顔をあわせる現場というのはそれ自体がスリリングだった。他の参加者の方々はどう感じたのだろうか?
実際にはけっこう長時間のイベントだったにもかかわらず、参加してみるとあっという間に時間が過ぎていった感じだ。もっと参加者同士の交流ができればと思った。小林のりおさんが強調していたように、インターネット上のホームページを写真の活動の場にすることはとても有益だと思う。「フォト・ゼミ」も何らかの形でネットを利用すれば、遠距離に住む人たちや、多忙な人にワークショップ参加の道が開けるのではないだろうか。メディアテークという「場所」があるのだから、ワークショップ参加者による展覧会を開くのも楽しいのでは、と思った。

内原恭彦

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