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10月の月例上映会は、今年で没後50年をむかえる映画監督・溝口健二の作品を上映します。『西鶴一代女』(1952年)、『雨月物語』(1953年)、『山椒太夫』(1954年)でヴェネチア映画祭銀獅子賞を3連続受賞したただ一人の監督である溝口健二は、ジャン=リュック・ゴダールなど海外の作家に影響を与えたことでも知られています。また、黒澤明、小津安二郎、成瀬巳喜男など日本映画の巨匠のひとりと数えられるものの、監督作品90本のうち、現存するものは30本あまりでしかありません。そこで今回、入江たか子と岡田時彦の『滝の白糸』(1933年)から田中絹代主演の『夜の女たち』(1948年)まで、現存する作品のなかから初期の秀作をご覧いただきます。

■監督プロフィール■
溝口健二(みぞぐち・けんじ)
1898―1956年。日活向島撮影所で監督助手(助監督)として働き、1923年『愛に甦る日』を初監督。無声映画時代の末期に撮られた『滝の白糸』(1933年)が高い評価を得た後、山田五十鈴が主演の『浪華悲歌』『祇園の姉妹』(ともに1936年)でリアリズムの世界を確立する。またいわゆる"芸道もの"でも『残菊物語』(1939年)といった傑作を撮った。そして『西鶴一代女』(1952年)でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。翌年の『雨月物語』、さらにその翌年の『山椒太夫』でも同映画祭銀獅子賞を受賞するという快挙を成し遂げ、世界に溝口健二の名を響かせる。その後も長谷川一夫と香川京子による『近松物語』(1954年)、『新・平家物語』(1955年)など傑作を撮り続けたが、『赤線地帯』(1956年)を遺作としてこの世を去った。

作品紹介

『滝の白糸』
1933年/モノクロ/101分/35ミリ *ニュープリント *サイレント上映
原作は泉鏡花の『義血侠血』。出演は入江たか子と岡田時彦ほか。明治の水芸人、滝の白糸(入江)と検事を目指す苦学生、村越欣弥(岡田)による悲恋の物語。溝口のサイレント期を代表する名作。

『マリヤのお雪』
1935年/モノクロ/84分/16ミリ
モーパッサンの『脂肪の塊』を川口松太郎が翻案した作品。西南戦争に揺れる最中、田舎芸人のお雪(山田五十鈴)とおきん(原駒子)のつつましくもたくましい姿を描いた傑作。『映画への不実なる誘い』(せんだいメディアテーク主催)で蓮實重彦氏が言及した作品。

『浪華悲歌』
1936年/モノクロ/85分/35ミリ
主人公のアヤ子(山田五十鈴)は会社の金を横領した父を助けるため、勤め先の会社社長の愛人となるものの人生を転落していく。関西弁の活用など、リアリズムの映画作家として名声を得た作品。
『残菊物語』
1939年/モノクロ/147分/35ミリ
歌舞伎俳優・尾上菊之助(花柳章太郎)の成功までを描いた作品。ワンシーンワンカットの長回しを多様した一分の隙もない完成度で、戦後溝口のひとつの頂点をなす傑作。
『元禄忠臣蔵・前篇』
1941年/モノクロ/112分/35ミリ
大石内蔵助をはじめとする家臣達の悲観溢れる葛藤が描かれる前編。のちのすべての「忠臣蔵」映画に影響を与えたといわれる原寸大の松の廊下のセットでのロングショットは圧巻。
『元禄忠臣蔵・後篇』
1942年/モノクロ/111分/35ミリ
元禄16年2月4日、切腹の日を待つばかりの四十七士の姿がはかなくも活写されている。討入りのシーンを手紙による報告で大胆に割愛したことでも有名。
『歌麿をめぐる五人の女』
1946年/モノクロ/95分/35ミリ *ニュープリント
浮世絵師・喜多川歌麿(板東蓑助)を中心に、水茶屋のおきた(田中絹代)や御殿女中が、色と恋に生きるさまを描くメロドラマ。1930年代松竹の三大スター女優、田中絹代、飯塚敏子、川崎弘子がそれぞれ成熟した女性を演じている。
『夜の女たち』
1948年/モノクロ/74分/35ミリ *ニュープリント
敗戦直後の日本。そこに生きる戦争未亡人の房子(田中絹代)、妹の夏子(高杉早苗)と房子の義妹・久美子による戦後の傷跡の癒えない大阪を舞台に、苦境に立たされた女性たちに焦点をあてた社会派ドラマ。


会期・会場

せんだいメディアテーク
7階スタジオシアター

10月24日(火)・25日(水)
12:00―『滝の白糸』
14:30―『マリヤのお雪』
17:00―『浪華悲歌』
19:00―『残菊物語』
10月27日(金)・28日(土)
12:00―『元禄忠臣蔵・前篇』
14:30―『元禄忠臣蔵・後篇』
17:00―『歌麿をめぐる            五人の女』
19:00―『夜の女たち』

入場方法

入場料は1プログラム一般500円です。各回入替制(定員180名)。豊齢手帳・障害者手帳等をお持ちの方は半額となります。開場は上映の15分前を予定しています。 やむを得ない事情により企画内容の変更、および、入場の制限をさせて頂く場合がありますのでご了承ください。


託児サービス

上映時に、1歳半から未就学児までの託児サービスがあります(おやつ代200円が必要)。往復はがき又は電子メール、FAXに、希望日時、住所、氏名、電話番号、お子様の氏名、年齢(月齢まで)、を記入のうえ10月16日(月)(必着)までに「月例上映会託児担当」までお申し込み下さい。

主催:せんだいメディアテーク
    

共催:コミュニティシネマ支援センター/(財)国際文化交流推進協会(エースジャパン)/東京国立近代美術館フィルムセンター
 

支援:文化庁
 

作品提供:東京国立近代美術館フィルムセンター/松竹株式会社

〒980-0821 せんだいメディアテーク
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