映像の世紀とうたわれた20世紀を経て、なおいっそうその波にさらされている今日。せんだいメディアテーク開館10周年を機に、これまでさまざまな上映やパフォーマンスをおこなってきたスタジオシアターで、映像による表現と受容のこれからを探るシリーズ「ことばをこえて―映像の力」をお送りいたします。
今回は、映像による表現が個人のものになる一方で、今なお資本に縛られることも多い映画作りにおいて、さまざまな模索を続けながら新しい映画作家を輩出しているPFFぴあフィルムフェスティバルの最新作と、宮城県出身で『キャタピラー』など今も旺盛に映画を作り続ける若松孝二監督を紹介します。
会期 | : | 2010年11月20日(土)―23日(火祝) |
会場 | : | せんだいメディアテーク7階スタジオシアター |
入場料 | : | 1プログラム500円 各プログラムとも開場時に受付にて発売/開場は上映の30分前を予定/各回入替制 |
協力・作品提供 | : | PFF事務局、若松プロダクション、シマフィルム、(株)フォーバックス、仙台プロダクション・ネットワーク、仙台短篇映画祭実行委員会 |
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若松孝二と足立正生がカンヌ国際映画祭の帰路にレバノンへ向かい、当時日本赤軍の重信房子(日本語版の音声も担当)の協力のもと、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)と共にゲリラの日常に迫ったドキュメンタリー作品。世界革命のためのニュースフィルムを標榜し、全国の大学などで上映運動が行われた。
監督:若松孝二、足立正生/1971年/71分/16ミリフィルム
恐妻家のサラリーマンが飲みすぎて帰りの電車に乗り、気がつけば見知らぬ海辺の町にたどりついたことから始まる放浪の旅。映画全体を通じて主人公の男のだらしなさとユーモアあふれる作品だが、原題は『蒸発人間』で、当時話題となっていた今村昌平監督の『人間蒸発』のパロディーであり、映画による批評でもある。
監督:若松孝二/1967年/78分/35ミリフィルム(16ミリ上映)/出演:山谷初男。水城リカ、新久美子
若松プロダクションの第1作であり、1965年のベルリン国際映画祭に出品され物議を醸した作品。かつて学生運動を共にした男と団地の一室で常時を重ねる主婦と、団地の別の一室で悶々とすごす青年。高度経済成長期のなかで生まれた「ニュータウン」のなかで、やがて青年は狂気に駆られていく。
[トーク]
ゲスト:平沢剛
1975年神奈川県生まれ。映画研究者。明治学院大学非常勤講師、『VOL』(以文社)編集委員。編著に『アンダーグラウンド・フィルム・アーカイブス』(河出書房新社/2001年)、『文藝別冊 ゴダール』( 河出書房新社/ 2002年)、『映画/革命』(河出書房新社/2003年)、『ファスビンダー』(現代思潮新社/2004年)『若松孝二全発言』(河出書房新社/2010年)。
監督:若松孝二/1965 年/64分/35ミリフィルム(16ミリ上映)/出演:藤野博子、吉沢京夫、寺島幹夫
親を殺してしまった17歳の少年がひたすら自転車をこぎ北へと向かう姿を描く作品。若松作品の特徴ともいえる暴力や性が描かれることはなく、最近では『ゲゲゲの女房』(NHK連続テレビ小説)でも知られる、主演の柄本佑が当時まだ10代の透明な存在感を出している。また、今年5月に亡くなった仙台出身の美術評論家・針生一郎が出演している。
[トーク]
ゲスト:若松孝二
1936年宮城県生まれ。『甘い罠』(1963年)で映画監督デビュー。1965年には若松プロダクションを設立し、同年の『壁の中の秘事』がベルリン国際映画祭に出品される。性と暴力を主題にした数々の作品を生み出す一方で、大島渚の『愛のコリーダ』(1976年)をプロデュースするなど、優れた才能を引き出す製作者でもある。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年)に続き今年ベルリン国際映画祭に出品された『キャタピラー』で銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞。
監督:若松孝二/2005年/90分/35ミリフィルム/出演:柄本佑、針生一郎、関えつ子
木造アパートで暮らす老夫婦の老老介護生活。介護と貧困に疲弊する妻キミコの、しかし大阪のおばちゃんならではの派手好みな服と生活臭のミスマッチが不思議な魅力を醸し出す。PFFアワードグランプリ受賞。
監督:山川公平/2009年/44分/ビデオ
愛情となれ合いの間に揺れるオギと僕は、同じマンションに住むプリン好きの女の子と知り合ったことで微妙に関係が変化していく。スモッグでかすむ町に暮らす若者たちの、煩悩にまみれたくだらなくも愛おしい日々。
監督:森岡龍/2009年/52分/ビデオ
乙女チックな男の子・くらげくんはガキ大将タイプの虎太郎が大好き。引越しで離れ離れになってしまう2人は電車に乗って旅へ出た。少年の一途な想いは届くのか? 仙台短篇映画祭2010「新しい才能に出会う」選出。PFFアワード準グランプリ受賞。
監督:片岡翔/2009年/14分/ビデオ
母親からネガティブ思考の洗脳を受けてきたミチコは、普通の女の子の幸せを手に入れるため、自分を変えようと踏み出す。憧れと失望の果てにある種の開き直りに達する彼女と母親の変化を洞察力豊かに描き出した作品。
監督:天野千尋/2009年/66分/ビデオ
恋人のいる男と付き合うこと以外、損得の判断でしか日々を生きていない女。いいかげんでズルくて、でもひどく現代的な女性を15分という短い尺の中で軽やかに描く。PFFアワード企画賞・エンタテインメント賞受賞。
監督:田崎恵美/2009年/15分/ビデオ
かつて恋人同士だった絶望した女と絶望した男の数年ぶりの再会。希望は重さのあまり、さらに増幅した絶望を生み出す。そして、絶望という恐怖を通り過ぎた後には、もう笑いしか残されていなかった。
監督: 奥田庸介 /2009年/75分/ビデオ
母親と二人暮らしで、クラスでもぱっとしない高校生のユウタが、見知らぬ男の鞄の中身を手掛かりに、見知らぬ家族を探し、大人へと向かうロードムービー。PFFアワード審査員特別賞受賞。バンクーバー国際映画祭“ドラゴン&タイガー・ヤング・シネマアワード”グランプリ受賞
監督: 廣原暁/2009年/81分/ビデオ
友達以上恋人未満のような関係の高校生カップルの姿を追ったささやかな一昼夜の物語。男女二人の他愛のないふれ合い、会話、その積み重ねの果てに思春期の揺れる心が優しく浮かび上がる。
監督:勝又悠/2009年/18分/ビデオ
上京後、夜の街でひっそり営業する雀荘で働き始めたハルヲは、元カメラマンで視覚障害の経営者マグチや脚の悪い同僚アランらと出会うが……。誰もが抱える欠損を人との絆で埋めてゆくことの必要と儚さを描く。PFFアワード審査員特別賞受賞。
監督: 阿部綾織、 髙橋那月 /2009年/83分/ビデオ
片思いの彼のためにイチゴジャムをつくる女子大生。艶めかしい深紅のツヤを輝かせるジャムは、彼女の官能的妄想やせつない乙女心を代弁するように、映画の小道具の域を越えて印象づけられる。
監督:庭月野議啓/2008-9年/32分/ビデオ
東京でモデルをしながら生きる外国人のカップル。都市の孤独から抜けるために東京を出て雪山へと向かう。現代社会のはかなさを揺り動かす自然との格闘。PFFアワード審査員特別賞受賞。
監督:ジェームズ・マクフェイ/2009年/57分/ビデオ
育ての父親を離婚で失った転校生と、死んだ妹への思いから抜けられない同級生。「特殊な能力」で結ばれた二人が、交流を重ねる中でそれぞれのトラウマから解放されていくまでを描く
監督:Yoshino/2009年/50分/ビデオ
幽霊をビデオにおさめた主人公カナンだが、家族にそれを見せても何も映っていないという。霊的視点が見つめる現代の欠落した家族の肖像が、詩や音楽の様に大胆に構築され、意識下に狂想のドラマを紡いでいく。
監督: 山内崇寛/2009年/60分/ビデオ
すべてが不可解な記号で構築された世界の中で、無表情の少女は理不尽なゲームの主人公となり、やがて自我を目覚めさせていく。物語の予定調和に抗いつつ、躍動感のある映画へと昇華させた作品。
監督:堀内博志/2009年/52分/ビデオ
就職活動のために上京しつつアルバイトをする山田。電話番もできない不器用な彼は、美人OL涼子にあこがれるが……。ステレオタイプとコンプレックスで他者を攻撃する強烈なキャラクターが光る。PFFアワード映画ファン賞受賞。
監督:小林岳/2009年/72分/ビデオ
自殺した弟のために、窃盗、器物破損、手紙偽造など、次々に常軌を逸した行動に走る女の復讐劇が生み出すブラック・コメディ。辻褄合わせや整合性といった概念を平然とやり過ごし、奇想天外で型破りなユーモアが立ち上がる。
監督:北川仁/2009年/49分/ビデオ
郊外の住宅地にマイホームを手に入れた家族という、多くの人にとってありふれた、それでいて深い思いをはらんだ題材に、2008年のPFFアワードで『症例X』が審査員特別賞を受賞し、その後、ロカルノ国際映画祭など海外にも招待された気鋭の作家・吉田光希監督が、PFFスカラシップ作品として初の長編に挑戦した映画。
監督:吉田光希/2010年/90分/35ミリフィルム/出演:南果歩、郭智博、田口トモロオ
このワークショップは、4-5人のグループで、舞台と衣装や小道具が用意された会場を使い、ストーリーの組み立てから撮影、そして上映までを3時間でおこなうものです。『エターナル・サンシャイン』や『僕らのミライへ逆回転』、そしてビョークやザ・ローリング・ストーンズらのミュージックビデオを手掛けた映像作家ミシェル・ゴンドリーが考案し、特別な技術や経験がなくとも「映画」をつくることができるワークショップとして、世界各地で実践されています。仙台では9月に開催されたショートピース!仙台短篇映画祭2010で初めて行われ好評を博しました。
参加ご希望の方は、はがきか電子メール、FAXにて催し名、希望時間、代表者の方の住所と氏名、グループの全員の氏名、電話番号を記入し、メディアテークまでお申し込みください。先着順となります。
会場:1階オープンスクエア
日程:11月20日(土)
1回目 12:00 / 2回目 14:00 / 3回目 16:00
各日11:00の回には託児サービス(1歳半から未就学児・200円)があります。ご希望の方は、はがきか電子メール、FAXにて催し名、希望回、住所、氏名、電話番号、お子様のお名前、年齢(月齢まで)を記入し、11月10日(必着)までにメディアテーク託児担当までお申し込みください。