シリーズ・レクチャー 映画の解読

シリーズ・レクチャー 映画の解読

「映画の解読」は、映画を見るだけではなく、より深く読み解いていくためのレクチャーです。

日時

すべて19:00-21:15

やむを得ない事情により内容・講師は変更される場合がありますのでご了承願います。

場所

せんだいメディアテーク7階スタジオシアター

主催

第1回 5月7日(金)
『裁かるるジャンヌ』(カール・ドライヤー/1927)から『女と男のいる舗道』(ジャン=リュック・ゴダール/1962)へ−クローズアップとステレオタイプ−

アンナ・カリーナ扮するナナが身をやつしていくさまを、十二の小景として描くゴダールの『女と男のいる舗道』。ナナが『裁かるるジャンヌ』を見て涙するシーンは有名で、それはドライヤーへのオマージュでもあるといえるとともに、「クローズアップ」という映画の技法についての問いかけでもある。『女と男のいる舗道』のいくつかの場面を見ながら、ゴダールのステレオタイプ批判の問題を考える。

講師:梅木達郎(うめき・たつろう)。東北大学大学院国際文化研究科助教授。専門はフランス文学・思想。著書『脱構築と公共性』(松籟社)のなかでハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』(1959)について論じている。

第2回 5月14日(金)
『周遊する蒸気船』(ジョン・フォード/1935)−水上の疾走感−

19世紀末のアメリカ南部。ミシシッピ川であやしげな薬を売るドク・ジョンは、おんぼろ蒸気船をやっと手に入れた。しかし、一緒に旅をしようとしていた甥のデュークが美しい娘を悪い男から救おうとして誤って男を殺してしまう。ドクはデュークを自首させるが正当防衛は認められず、娘とドクはデュークを救うため船を走らせる。飄々とした演技で人気を博したウィル・ロジャースと組んで、『駅馬車』(1939)で有名なフォードの茶目っ気あふれる演出が光る。

講師:山崎冬太(やまざき・ふゆた)。東北学院大学教養学部助教授。専門はフランス文学。ハリウッド黄金時代をこよなく愛している。

*DVDで全編を上映します。

第3回 6月10日(木)
『冬の猿』(アンリ・ヴェルヌイユ/1962)−ギャバンとベルモンド、最初で最後の出会い−

酒に溺れ思い出に浸る日々を断ち切って、今は静かに暮らすアルベール(ジャン・ギャバン)。そんな彼のところにやって来た青年ガブリエル(ジャン=ポール・ベルモンド)もまた、過去を引きずって生きていた。やがて心を開いたガブリエルは、その村に来た本当の理由を打ち明ける。ノルマンディの美しい風景と歴史を背景に、安宿の老主人と若く奔放な男との奇妙な交流を、『ヘッドライト』(1955)『地下室のメロディ』(1963)のヴェルヌイユ監督がしみじみと描く。

講師:辻野稔哉(つじの・としや)。東北学院大学非常勤講師。専門はフランス文学・フランス表象文化。最近は第二次大戦前後のフランス映画に興味を持っている。

*DVDで全編を上映します。

第4回 6月18日(金)
『橋』(ベルンハルト・ヴィッキ/1959)−熱狂と覚醒の狭間−

ドイツ軍の敗色が濃厚になった南ドイツの田舎町。村に通じる橋を死守するために選ばれた7人のヒトラーユーゲントの少年たちは、無邪気な名誉心と無謀な勇気で橋の防衛にあたるが、いざ戦闘が始まるとあまりの凄まじさに圧倒され、想像と現実の違いに凍りついてしまう。戦後ドイツ映画の復興を国内外にアピールすることになった『橋』は、スピルバーグの『プライベート・ライアン』(1998)に多大な影響を与えたことでも知られている。

講師:石塚秀樹(いしづか・ひでき)。東北学院大学教養学部教授。専門はドイツ文学。映画は黒澤が好き。でも、一番好きなのは、映画が始まる前のドキドキワクワクする瞬間。

*DVDで全編を上映します。

第5回 6月25日(金)
思い出の光、思い出の風:候孝賢の映画世界

侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の映画は、なつかしい。古い映画だからなつかしいという訳ではなく、なぜか記憶の中の風景や、本当に体験した訳ではないけれど、こんな風であればよかったと思うような、なつかしい感覚にあふれている。なつかしさは、せつなさと背中合わせだ。そんな侯孝賢の映画世界の魅力をみなさんと分かち合いたい。『風が踊る』(1981)『恋恋風塵』(1987)『冬冬の夏休み』(1984)『悲情城市』(1989)『戯夢人生』(1993)を中心に語る。

講師:阿部宏慈(あべ・こうじ)。山形大学人文学部教授。専門はフランス文学。大学で「映像論」や「表象文化論」を講義する日々。それは楽しいことである反面、つらいような気がする時もあるが、話し出したら止まらない。