全館再開のお知らせ

せんだいメディアテーク



せんだいメディアテークをもっとよく知るためのさまざまな情報を、副館長の佐藤泰がお届けします。

50「節電」


震災の夜、すべての灯りが消えた街の空は満天の星。ビルの屋根どうしで区画された細い隙間にすら大小の星が流れ込み、見上げる壁やガラスを静かに照らしていました。その美しさに驚きつつも、数日をかけて少しずつ点灯していく街の光は、私たちにとって安堵と希望の象徴でもありました。
そのようななか、東京のニュースが報じていた「計画停電」や「節電」という言葉は、どこか別世界のことのように聞こえていました。仙台などでも節電の取り組みが本格化したのは、その後しばらくたってライフラインが以前の状態に戻り始めた5月以降です。コスト削減の必要から震災の前からすでにさまざまな対策がおこなわれてはいたのですが、今回はまるで戦時中でもあるかのように徹底した節電が求められていました。メディアテークでも、ライトアップ的な演出照明の中止はもちろん、エリアごとの照明を調光によってぎりぎりの光量まで落としましたが、電気がついたまま暗くなる調光方式ではその努力がわかりにくく、一般市民のかたから「節電の努力が足りない」というクレームすらでて、結果、灯具の取り外しなど実際の節電にはあまり効果のない対策もあわせておこなうほどでした。
このようにして節電の数値的な成果はそれなりにあがりましたが、それを通じて私たちが学んだことは少なくありません。消しても支障のない電源が予想外に多かったことは大きな発見でしたが、街全体が暗くなることで、これまで平板な明るさに包まれていた街の夜景が明暗のコントラストを取り戻し、私たちに光の意味をあらためて気づかせてくれたとは言えないでしょうか。節電の取り組みが、単に明るい状態から不要な電気を消す引き算としてだけでなく、むしろ暗闇の中から本当に必要な光を少しずつ足し算して、陰影に満ちた豊かで奥行きのある空間を創ることにつながるとしたら素敵ではないかと思います。

(2011/10/01)



  • 星空 地震が起きた3月11日の夜は、停電になった。撮影:越後谷出

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