全館再開のお知らせ

せんだいメディアテーク



せんだいメディアテークをもっとよく知るためのさまざまな情報を、副館長の佐藤泰がお届けします。

55「ふるさとの姿」

ふるさとは、人ひとりひとりの心の中にあります。それは、その人が育った場所としてだけでなく、たとえば両親や家族に見守られながら、幼い友と無心で遊んだ思い出とともに、あるいは青春時代のほろ苦く甘酸っぱい思い出とともに、その人にとってもっとも無垢でかけがえのない記憶として存在しています。そしてその記憶は、その人のありのままの姿が無条件に迎え入れられた至福の瞬間を証明するものでもあるでしょう。
人間関係がますます複雑化する現代において、希薄になりがちな人とのつながりを補うために、至福の記憶の拠り所として、またはその土地に暮らすた人々が代々育んできた歴史や文化の拠り所として、あらためて「ふるさとの姿」が見直されているように思います。
しかしながら、都市化が進むだけでなく、家々や町並みが次々と作りかえられる日本では、その姿を探すことすら難しくなっています。登場人物の幼年期の回想シーンが頻繁に登場する韓流ドラマの人気には、どこかそうしたことへの渇望が作用しているかもしれません。
メディアテークが市民のみなさんとの協働によって進めてきた「地域映像アーカイブ事業」は、失われた、あるいは失われつつある「ふるさとの姿」を未来に伝えるだけでなく、人々や地域のアイデンティティの拠り所としての「ふるさとの姿」を共有するための取り組みでもありました。携帯端末を使って街にいながらその場所の記憶に接することのできる「まちかどタイムトラベル」は、今後も充実を図っていきたいと考えています。
そしてこうした活動をベースに、震災の後は各方面の協力や支援のもと「3がつ11にちをわすれないためにセンター」を立ち上げました。このセンターに記録として蓄積されるであろう人々の姿、すなわち生活基盤が根底から揺らいでいるなかで、支え合いながら立ち上がり、新しい生活をはじめていくありのままの姿は、未来の私たちに復興の原点、すなわち新しい「ふるさとの姿」を見せてくれるはずだと思います。

(2012/02/29)


  • 2011/7/11 荒浜
     2011/7/11 荒浜 撮影:越後谷 出
  • 2011/7/11 仙台市荒浜
     2011/7/11 仙台市荒浜 撮影:越後谷 出

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