全館再開のお知らせ

せんだいメディアテーク



せんだいメディアテークをもっとよく知るためのさまざまな情報を、副館長の佐藤泰がお届けします。

64「100万人の罠」

遠くからメディアテークを見学に来られた方々に「年間100万人のかたが来館しています」と説明すると、多くのかたが感嘆の声をあげます。日本の博物館の一館あたり年間入館者の全国平均が4万人、図書館の全国平均が6万人に達しないことを考えれば、施設規模の差はあるにせよ、一地方の文化施設として破格の利用者数といえます。これほどの利用者数を数える要因として、定禅寺通という地の利や、施設貸出による多様な利用があげられますが、なによりも伊東豊雄氏設計による開放的で生き生きとした空間のもつずばぬけた吸引力を第一にあげなければなりません。
しかしここには大きな落とし穴もあります。「入館者が多いから良い」という考えは、そのまま「入館者が少ないから悪い」という考えかたにつながります。いま、多くの小さな文化施設が、利用者数が少ないことを理由に存亡の危機にさらされています。しかしその施設の本来の価値が単に利用者数の多寡だけで判断されるべきものでないことは、たとえば故郷の価値が、その土地の人口や里帰りする人数によって計られるものではないということと同じだと思います。その一方で利用者の多い施設は、その賑わいの中で施設課題が見えにくくなるという問題もあります。「情報の受発信を支援する」とのメディアテークの施設コンセプトのうち、とくに発信については、100万人のうちほんの一握りの人々が参加しているのみで、その成果はまだまだ小さいどころか、メディアテークがそれをやろうとしていることすら知らない人が多いという事実は深刻です。公共施設である以上、利用者数は大切な指標ですが、しかしそのわかりやすさゆえに、本来の施設の存在意義や目的を見えにくくする場合も少なくありません。数字は数字として謙虚に受け止めるにせよ、私たちとしてはあくまで、メディアテークがどれだけ地域の文化の拠り所となり、支えとなりえているか、その質の高さと深さに真剣に向き合い続けることを大切にしたいと思います。

(2012/12/01)


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