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せんだいメディアテーク
980-0821
仙台市青葉区春日町2-1
電話 022-713-3171
ファックス 022-713-4482
office@smt.city.sendai.jp
http://www.smt.jp/

 

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天気の良い日、朝一番のメディアテークが最近の僕のお薦めです。1階プラザ・8番チューブの下に立ってみてください。 朝の柔らかい光があなたを包んで今日1日の元気を与えてくれるに違いありません。 「こんなのは公共施設の提供するサービスじゃない、日本はお金が無いんだから寝ぼけたことを言うな」。 理性派のあなたはおっしゃるかもしれませんが……。

smt主催で先ほど行われた「Dialog in the Dark」(ギャラリー4200、10月21日―31日)、ご覧になりましたか? 展覧会でもワークショップでもない。でも参加した僕には大きな感動が残りました。 「優れた絵画を展示し、ありがたく鑑賞するのがギャラリーの役割で、あんなのはお化け屋敷だ。 しかも予約制で自由に行けないのはけしからん」。芸術に造詣の深いあなたはそうおっしゃるかもしれません……。

「アートとは説明を介さずに感動を伝達することである(ノベルク・シュルツ)」。 アートの根源を説明したこの言葉が僕は好きですが、これに則すれば、先の2つの出来事は確実にアートだと思います。 光のシャワーを浴びること、光のない中で歩き、話をすること。 日頃当たり前のように接している「光」を自分や世界の一部として実感できることは、アートの種であり、 創造的に生きるための一歩に違いありません。

僕の職業は建築計画者、建築が所定の機能を果たせるようにお手伝いする仕事です。 しかし、最近中身が大きく変わってきています。これまでは従来のものに合わせるように仕向けるのが仕事でしたが、 先の見えないこの現代社会では、そうしたことは必ずしも第一義ではなくなってきています。 「ギャラリーとはこういう形」「図書館とは……」というふうに機能を画一的に考えるのではなく、 根本はチェックしながら(大展示会のために必要な壁量、光量をコントロールする工夫など)、 さまざまな可能性を実現させていくことが仕事の中心になってきています。 21世紀の人々が生きる可能性を発見し、感動を伝え合うためにどうするかが、 困難な時代に求められる本当の「機能」だと思うからです。

それでも「機能的」という言葉は美しいことの対極に置かれがちなので、 メディアテークは使いにくいと言う先入観をよく持たれてしまいます。 けれども新聞紙上で叫ばれているようなことは、実はそんなに大変なことではなかったり、 すでに周到な解決策が用意されている(展示室に差し込む光量も調整可能です)ことだったりするのです。 「空間が落ち着かない」、ふむふむ、でもその代わりに 「あれっ、こんな展示もやってるの」という気付きに満ちた空間になっていることにはみなさんは意外と無頓着だったりします (自分の子の短所ばかり口うるさく注意してしまうように)。

建築の機能を扱うプロとして、理性派や芸術派の方々にもこのあたりはぜひ共有していただきたいと思っています。

光のシャワーを「生かす」鍵は、実はあなた自身の中にあることを実感していただければ幸いです。