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せんだいメディアテーク
980-0821
仙台市青葉区春日町2-1
電話 022-713-3171
ファックス 022-713-4482
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昨年11月と今年8月、ビデオによる短編映像制作ワークショップの講師をさせていただいた。2回とも予想を越える希望者からの抽選となり、結果的に映像に興味を持っている50人程の人たちと知り合う機会を持つことが出来た。参加者の方々の熱心さは驚くべきもので、私が日頃付き合っている、卒業単位取得前提の学生たちとは一線を画す気迫のようなものが感じられ、とても新鮮な刺激を与えられた気がしている。それと同時に、残念ながら抽選にもれた希望者を含めて、映像を作ろうとする意欲を持った人々がこんなにたくさんいて、彼らが何らかの理由で、ワークショップ無しでは制作出来ないと感じてしまっている事に気がつかされたのだ。当然、映像を制作するにはそれなりの機材は必要だし、全くの初心者には、それらの映像機材の使い方を教えてもらいたいという要求はあるだろう。作品制作へ導いてくれるヒントが欲しいと思う人もいるはずだ。しかし、数年前ならいざ知らず、いまやビデオの機材なんて自家用車を購入するよりも気軽に手に入る時代だ。使い方もますます簡単になってきている。制作のヒントと言ったって、あくまでも創作のきっかけがつかめるかどうかといった不確かなものでしかなく、第一、芸術なんて教えられるようなもんじゃあない。ともかく、ワークショップに集まってくる人々は何を求めているのだろうか? もはや、少なくとも、立派な機材や先生を求めて人々がワークショップに集まる時代は終わってしまっているのだ。にもかかわらず…。やや使い古された言い方かも知れないが、やはり“場”を求めているのだ。似かよった志をもつ仲間が、なんとなくたむろしながら、時に気楽に冗談を、時に真剣に熱い議論をしてしまう、そんな関係性を許容してくれるスペースの必要性に多くの人々が気づき始めているということなのではないだろうか? かく言う私自身、仕事や買い物で仙台に行ったついでにふらりと立ち寄った時に、顔見知りに出会えるような場があれば、なんと素敵な事だろうと思ってしまうのだ。ワークショップが終わった時に付き合いが終わるのではなく、その時点で、本当の交流をスタートさせる事が出来るような、そんな“場”としてのメディアテークが期待されているに違いない。実際、昨年のワークショップ参加者が、今年のワークショップでは役者として活躍していたし、短編映画祭のスタッフとして健闘している人もいる。こんな“卒業生”たちに出会った時、思わずこぼれる私の笑顔が何よりもそれを証明してくれている。