■目次へ ■本文へ

 

せんだいメディアテーク
980-0821
仙台市青葉区春日町2-1
電話 022-713-3171
ファックス 022-713-4482
office@smt.city.sendai.jp
http://www.smt.jp/

 

写真

ぼくは大学時代に、ふたつの活版印刷と出会いました。ひとつは千葉大学の印刷工房で、手動式と機械式の印刷機、そして活字がありました。ただ、あまりきちんとさわった記憶がありません。というか、きびしい管理下にあったような雰囲気でした。もうひとつは恩師の森啓デザイン研究室でアルバイトをしているとき、年賀状印刷で生まれてはじめて、自由にアダナ印刷機を使わせていただいたことです。

そしてこの5月にsmtの地下で活版印刷に再会したときは、ひたすら、感動しました。あの建築、設備のどこに活版が存在しているのか。案内されるまで疑っていました。地下!と聞いて、バットマン? いや、これこそ活版です。

現在、ぼくはsmt活版印刷研究会のメンバーとともに、活版印刷とコンピュータを組み合わせたデザインワークショップを試みています。これは相当前から構想だけはありました。アナログの極地、そしてタイポグラフィの原点である活版を、コンピュータ上のタイポグラフィでシミュレートしたかった。それもぼくがやるのでなく、ワークショップで活版に興味がある人たちと。それが仙台であったことは本当に偶然で、人と人との出会いなのですね。

活版を体験すると、デザインやものづくりに関して、基本を学ぶべき点がいろいろと浮かび上がってきますが、その中でも特に重要なことは、活版の技術、システムを正確に習得することです。そしてやはり作法でしょうか。コンピュータにはそのようなことはありません。つまり、職能(精神)ということです。ぼくはそれを活版印刷から再度スイス/バーゼルで学びました。

smtでの活版印刷の活動は、できるだけ、長く続けてほしいです。そのためには、常に活字はどん欲に集めてほしい。継続は力なり。あせることはありません。でも、いつも活版を愛している人が地下室で作業をしていてほしいと思います(実はぼくが一番やりたいのです)。