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せんだいメディアテーク
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一緒に育つ場所写真

再演を繰り返している「アテルイの首」。今回の構成と演出にあたっては、smtという「むきだしの空間」から多くのアイディアをいただいた。

古代へのロマンの旅といった色合いが強いこの作品は、戯曲を忠実に劇化することで、民族間の葛藤や巨大な権力への抵抗など、現代的なテーマも浮き彫りになってくる仕掛けになっている。しかし今回は昨年の9・11を劇の中心に置き、アテルイの物語はテキストとして断片的に挟み込んだ。劇空間にはたえず現代時間が進行していて、そのなかに東北の古代という時が、白日のもとにさらされているようなイメージだ。

smt自体を舞台装置にした。1Fフロアの仕切りの壁を数枚ぬいて舞台に隙間を作った。定禅寺通り側を舞台にしたので、観客からは上演中、絶えず外を横切る来観者の姿が目に入っている。心地よいノイズも入り込む。外からの光、人影、ノイズに役者としての私も、楽師のチェリストも、スタッフも観客もグラグラと心が揺さ振られながら劇は進む。まさに現代時間と劇時間が拮抗しながらの舞台。野外演劇に近いスタイルだったのかもしれない。

多くの演劇人は、いつからか劇場という暗闇の中に押し込められてしまった。「暗がりと密閉」が保証されている劇場という空間で、ある空想的時間に身を委ねる・・・といった演劇スタイルから今回は抜け出したかったのかもしれない。むきだしの現実から劇をスタートさせたい。観る、観られる演劇ではなく、より「体験できる演劇」を観客と共有してみたい。そんな思いにいたったのも、やはりsmtに刺激されたからだろう。ガラスの壁・・・いや窓? ねじれた柱・・・いや光のエントツ? 無菌室のような地下駐車場。無刻を感じる奥まったバックヤードなどなど、演劇づくりを刺激してくれるスペース、あるいは隙間がそこかしこにある。演劇にとって上演する場所は大きな意味を持つし、発想のアイディアにもなる。

smtを開かれた劇場だと感じることができたなら、どんどん挑戦したほうがいい。演劇というレトロな手法と汗臭い生身の肉体が、smtには必要だし、きっと面白い演劇ができると思う。