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せんだいメディアテーク
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みんな集って輪になって

私は、2年前まで伊東豊雄建築設計事務所のスタッフとして、smtに係わっていました。独立して2年、いま群馬県勢多郡東村立の「新富弘美術館」の設計に携わっています。その村出身の星野富弘さんという方の作品を100点ほど展示するための小規模な美術館です。もともとは築30年くらいの建物を改修して使っていたのですが、そろそろちゃんとした建物をというわけで設計コンペが開催され、私の事務所の案が選ばれたわけです。大小の丸い部屋をたくさん寄せ集めたような建物です。

新しい美術館の平面計画は、おもに美術館スタッフや支援団体「富弘美術館を囲む会」の方々と一緒に検討してきました。今年夏の着工をめざして現在実施設計中です。地元では、コンペ前から建設プロセスを村民と行政とが共有すべく、建設検討委員会が組織され、討論会やワークショップが繰り返されてきたそうです。人口4000人に満たない小さな村ですが、県庁職員有志によるボランティア団体「PMF」がまとめ役となって、早稲田大学や群馬大学の先生たちと村民ボランティアなどからなるワーキンググループが8つも出来ています。なぜ小さな山村がそんなにホットなのでしょうか? おそらく、この美術館に寄せられる人々の注目や関心が、村にとっての最大の財産であるという意識を関係者全員が持っているからだと思います。開館以来10年間で来館者数が400万人、平均すると一日1100人という計算になります。メディアテークとは単純に比較できませんが、小さな村にとっては驚くべき数字です。さらには、設計コンペに寄せられた応募案は1200点あまり。この数もギネスブック級です。

新しい美術館の開館は2年後の春です。今後は、美術館の教育普及活動を拡張して、村民参加型の新しい美術館利用術のようなものを探りたいと考えています。つまり美術館を作品鑑賞目的以上にどう使いこなすかということです。また、美術館とその周りだけではなく、村内に残る古い養蚕農家や蔵、廃校になってしまった木造校舎などを再活用して、滞在型の生涯学習プログラムを立ち上げるという構想もあります。そういった地元の人たちとの共同作業をいろいろ思い描いていると、いつのまにか夜も更けてしまう今日この頃です。