メディアアートやデジタルアーカイヴと近しい仕事をしている関係で、せんだいメディアテークのことは企画段階からきいていた。しかし、実際に訪れたのは、仙台の小学校を対象としたプロジェクトに協力していただいた昨年秋のこと。開館からすでに2年近くがたっていた。
会議に遅刻し、息せき切ってとびこんだぼくを困惑させたのは、複数のチューブ型エレベータである。どれに乗れば会議室につくのか。とりあえず一番近いエレベータのボタンを押して待った。はたしてぼくの前の扉がひらいたのは、三基あるエレベータのなかで一番最後であった。別段急いでいなくとも気の短いぼくにとって、よい第一印象だったとは言いがたい。こころなしか館内も雑然としているように感じた。
数ヶ月たってプロジェクトを終え、仕事からはなれ、展覧会を見にきた。館に入ったときの印象が、それまでとはがらりと違っていた。もちろん建物はなにひとつ変わっていないはずである。
館内を回ってみて驚いたのが利用者の多いことで、しかも老若男女が普段着のままやってきている。地域密着型の図書館のいいところが、そのままひきつがれているのだろう。展覧会場にもその雰囲気があり、子供たちが遊びながら見てまわっていた。美術館ならひんしゅくをかう光景であるが、あまり気にもならず、かえってほほえましく感じるのが不思議だった。
何度か通ううちにエレベータにも慣れた。また、雑然とした雰囲気は、考え抜かれたインフォメーションシステムの結果であることも知った。4月には、自分が出品した展覧会「映像体験ミュージアム」も開かれた。映像玩具や映像装置がたくさん並んだので、きっとたのしく遊んでもらえたことと思う。
ゴールデンウィークに1階のカフェで子供向けの関連企画が催された。フリップブック(パラパラマンガ)やアナモルフォーズ(円筒鏡によるだまし絵)など4種類の映像おもちゃをつくるワークショップで、そのナビゲーター役を務めさせていただいた。
始まるやいなや、子供たちはぼくの説明など聞かず、どんどん作っていく。聞けば、これまでもワークショップに参加したことがあるリピーターが多いという。なるほど、物怖じしないわけである。
ワークショップを終えて片づけをしていると、息せき切って男の子がかけこんできた。もう終わったことを伝えると、しょんぼりして帰ろうとしたので、呼びとめて、工作の材料をあげた。このワークショップでも何人かリピーターになってくれるといいなと思った。