報告 2024年02月15日更新

【レポート】第90回てつがくカフェ ーシリーズ「結婚の定義」ー


【開催概要】

第90回てつがくカフェ@せんだい

日時:2024年2月11日(日)14:00〜16:30

会場:7f スタジオa

ファシリテーター:辻明典(てつがくカフェ@せんだい)

ファシリテーショングラフィック:丹治圭蔵


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今回は<結婚と子ども>というテーマで対話を行いました。シリーズ「結婚の定義」の最終回として、「結婚」と強く関係があるように思われる「子ども」に関わる事柄を、広く問い直してみようと設定されました。

 まずは「結婚と子ども」というテーマから思ったこと、考えたことを自由に発言してもらいました。はじめに、結婚の制度に「子ども」の存在が結びつくのはなぜか、という疑問が挙げられました。続いて、国から子どもを産むことが推奨される世の中で、「子どもが欲しい」という気持ちが、制度に都合のいいものになってしまうことへの違和感を表明する方がいました。

さらに、子どもをもつことへの多様性にも触れられました。同性婚をはじめとする制度の中でも、子どもをもつことを選びやすくなることが望ましいという意見の一方で、制度として成り立たたせるためには、ある程度の制約や縛りが必要ではないかという声も上がり、多様な価値観の尊重と社会にとって安定的な制度であることの両立の難しさが浮き彫りとなりました。

そこから、より個人的な話に発展し、結婚そして、子どもを産むこと、育てることに対するいくつかのハードルが挙げられました。障がいを持つ人同士の結婚では、出産しない・できない人が多い気がするという意見や、「女性はキャリアが途切れてしまう。男女がそれぞれ50%ずつ妊娠できたらいいのに」という声。また、非正規雇用で将来の不安がある中で、結婚する、子どもを持つという選択はできないという人もいました。

また、男女の違いについても話題になりました。女性は精子バンクなどを利用し、子どもを産むことができる一方、男性は代理母での出産など、一人の身体のみでは完結することができないという事例が示され、こうした男女の身体性のギャップが子どもに関わる制度を考える肝になるのでは、という見解がありました。

他にも、個人が「幸せ」について考える社会であるために、結婚する(しない)選択、そして、子どもをもつ(もたない)選択ができるようになればいいという声、新たな命を産み育てることは慎重に考えるべきなど、様々な意見があげられました。

このあたりで自由対話を終え、「結婚と子ども」の考えをさらに深めるため、キーワードの抽出に入りました。キーワードは以下の通りです。

・自由を失わせる力

・個人

・産むこと

・育てること

・社会のありよう

・幸福の二義性

・親・子ガチャ

・血縁関係

・多様性

・制度の導入、見直し

・生殖補助医療

ここから、さらに考えを深めていく中で、「産むこと」と「育てること」の違いについて、前者は個人的、後者は社会的なものであるという考察がありました。産むことは、究極的には女性の身体を持つ人が可能であり、個人の営みに収斂する可能性がある一方、育てることは、社会全体で集団的に支えることができるかもしれないという理由からです。こうした意見に関連して、「結婚」と「子ども」を切り離してみることで、男女に限らない結婚や里親制度の整備など、「結婚と子ども」に関わる多様性が、これまで以上に見えてくるという意見もありました。

また、DNA鑑定や精子バンク、代理母などを一例とする「生殖補助医療」というキーワードからは、現在は新しい技術に制度が追いついていない状況で、技術と制度を支える倫理のせめぎ合いを、社会の関心から考えていくことができるとの指摘もありました。

そして最後に、ここまでの対話を基に今回のテーマ「結婚と子ども」に関する問いを各参加者に作って頂きました。

 ・私たちは母親から生まれてきた事実を忘れる自由があるのか

 ・お金と魅力がなくても自由に結婚できる、子どもがもてる社会とは

 ・人間はどこまで自由に生殖をコントロールしていいのか

これらの問いを立てたところで時間終了となりました。子どもというテーマから、結婚を捉えることで、個人と他者の関係を丁寧に見つめる2時間半になりました。今回でシリーズ「結婚の定義」は最終回となります。これまでご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

また、このシリーズを協働開催していただいた♀×♀お茶っこ飲み会・仙台さんが今年度の協働を経てレポートを寄せてくれました。ぜひ一読ください。

てつがくカフェ「結婚の定義」全5回をふりかえって



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