♀×♀お茶っこ飲み会・仙台では、「そもそも結婚とは何か」というテーマを掘り下げ考察するべく、2022年10月よりメディアスタディーズ「結婚の定義」に取り組んでいます。
　このテーマはとても身近なものですが、一方で、日常生活の中ではその根本が曖昧なままやり過ごされがちなところもあります。これは「当たり前」を問い直すてつがくカフェのテーマとして相性が良いのではないかと考えていたところ、「てつがくカフェ＠せんだい」のみなさんと協働させていただけることになり、2023年度に「結婚の定義」を冠したてつがくカフェシリーズ全5回を開催する運びとなりました。

全5回の告知およびレポート

https://www.smt.jp/projects/dom/2023/07/content.html

　毎回老若男女さまざまな方々の参加があり、多様な意見を互いに否定せず伝え合い耳を傾け合う場の中で、新たな視点を多く得ることができました。
　参加者は匿名で、他の参加者とは基本的にその場限りの関係ですが、それでも毎回場が荒れることなく、充実した語り合いの場が成立していたのは、ファシリテーターのこまやかな司会進行や、公共施設のオープンスペースを会場としていること、そしてもちろん参加者ひとりひとりの心がけによるものだと思います。安全で丁寧な対話の場づくりに、てつがくカフェの手法は大変有用なものであるとあらためて感じました。
　特に「結婚」というテーマは、関係する法律や歴史の話を突き詰めていくと非常に専門的になり、対話の場でも知識のある側がない側より優位に立つ、「マウントを取る」ような構造になってしまいがちです。法律や歴史について深く学ぶことももちろん非常に重要ではあるのですが（お茶っこ飲み会でも、弁護士をゲストに招き専門的知識を学ぶトークイベントなどを開催してきました※）、極めて身近で誰もが無関係ではいられない「結婚」というものは、専門家が一般大衆に「正解」を押し付けて済ませられるようなものではありません。専門家でなくても、専門知識がなくても自分なりに考えて、自分の意見を言っても良いんだということ。本来はてつがくカフェの場でなくてもそうであるはずですが、それがなかなか難しくなっている中、意識的にそういった語り合いの場を設けることの重要性は増しているように思います。
　実際、一連のシリーズにおいて印象的だったのは、「当事者性」を持って発言されていた方が多かったことです。結婚している、結婚したくない、結婚したくてもできない...哲学というとなんだか小難しい、机上の空論めいたイメージを持たれがちですが、てつがくカフェの手法を用いることによりむしろ、頭の中だけでこしらえた理屈ではなく、自分の身をもって経験した事柄に基づいた意見が引き出されるというのは興味深いことでした。これは「匿名」「一期一会」という場の設定も功を奏しているのかもしれません。その場限りの関係だからこそ、自らについて踏み込んだ話もできるのかもしれません。

　「結婚」というものは国や地域、時代によって大きく異なり、結婚しない・できない人も含めすべての人が何らかのかたちで関わらざるを得ないものです。現代日本においても、夫婦別姓、同性婚、共同親権、嫡出推定など、「結婚」に関わる大きなテーマについてさまざま変化の兆しがみられる中、ひとりひとりが自分ごととして考え、自分なりの意見を持つということはとても大切なことだと思います。このてつがくカフェの一連の取り組みが、そんなことを考えるひとつのきっかけになれば幸いです。お茶っこ飲み会でも、てつがくカフェを通して学んだことを糧に、引き続きさまざまな角度からこのテーマに向き合っていきたいと考えています。

　最後に、貴重な協働の機会をくださった「てつがくカフェ＠せんだい」のみなさんと「せんだいメディアテーク」のみなさんに心より感謝申し上げます。

♀×♀お茶っこ飲み会・仙台　MEME

※参考ブログ記事

トークイベント「徹底討論！同性婚法制化の問題点を推進派の弁護士さんに聞いてみた」（2017年2月11日開催）
https://blog.goo.ne.jp/ochakkonomi/c/10e35d514a5222fdd0b2bb0d3d6b8cd7

トークイベント「同性婚応援してる弁護士さん、複数婚も応援してくれますか？～ポリアモリーと法律について考える～」（2019年12月7日開催）
https://blog.goo.ne.jp/ochakkonomi/c/e8ed33d68e80b46deac9484eaf30f4d4

メディアスタディーズ「てつがくカフェ」https://www.smt.jp/projects/cafephilo/

メディアスタディーズ「結婚の定義」https://www.smt.jp/projects/dom/