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せんだいメディアテーク
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聴衆の中から1人の「自習生」が立上がった。smt1周年記念シンポジウムでの出来事である。 曰く、7階で自習しているとスタッフが、3時間で席を空けるように、と言いに来る、らしい。座席数を増やして欲しい、とのことである。自習生の占拠による座席の慢性的不足に頭を悩ませている公共施設も多いのではないか。どうやらsmtは自習生を排除したり、見て見ぬ振りをするという両極端な態度をとってはいないようだ。smt的自習空間を軽くスケッチしてみたい。

予備校などの「張り詰めた自習室」を1つの極とすれば、立地、コーヒーの価格、ノイズ、店員の数に比べて多すぎる席数のために自習生の無法地帯?となっている広瀬通りのカフェ・ベローチェは「緩い自習室」としての対極といえるか。ベローチェの自習生は、各自の席を散逸的に確保しつつも、時折誰かの席に集まり話し込むことを日課とし、仲間との繋がりのまま、煙と喧噪に包まれたベローチェに馴染む。 smtにおける自習生、時折ケイタイの着信画面を眺める彼らは基本的には静かである。コミュニケーション・チャンスの海?であるsmtにおいて彼らの閉塞感は時に異彩を放つ。そんな自習生を拒絶せず許容するsmtは、緊張感と喧騒の間を揺れ動く。この現象は、誰もが納得するただひとつの答えに収束しそうにない。しかしそこにはひとつの解答が芽生えつつあるようにもみえる。その鍵はsmtの「気紛れさ」にある。smtは時に自習生を煙たく思い、時に彼らを恋しく思う。

3時間毎に巡回してくるスタッフ、押し寄せてくる「アプリケーション・ツアー」も自習生にとってはスプリンクラーのようなものである。水を浴びたくない自習生は一時的にその場を離れなくてはいけない。smtの「自習空間戦線」において、自習生/スタッフいずれかが優位となることはない。そこにはある種の「ゲーム的状況」が成立している。自習生の数、スタッフの忙しさ、他のイヴェント、来訪者との関係、学校の試験期間など可視/不可視の要素が暫定的な均衡状態をつくり出す。この「ゲーム的状況」はコミュニケーションの1形態という意味ではsmtそのものかもしれない。「禁止事項」が固定され自習生が居なくなると「ゲーム的状況」も消滅してしまう。自習空間を一時的に追われた自習生は何処へ行くのか。smtのどこかで別の「ゲーム的状況」を生産しているのだろうか。