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せんだいメディアテーク
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「私、5月の連休に、仙台へ行って子ども達とかくれんぼしてきたの。」と話すと、聞いた人たちは一様に驚きの表情を見せる。5月にsmtで開催された「retake」展のワークショップ、「かくれんぼ*かくされんぼ」に参加してきたのだ。

ワークショップに参加した子ども達と一緒に、「あっ! こんなの見つけた。」「おや! こんなところが違う。」と、照明器具、外の景色、チューブ、チューブの中から見える空と階下の床、床に映える虹、などとsmtの不思議な空間を探検した。どうして? なぜ? なんのために? 家具、器具、造作など、ふだん何気なくふらっとsmtに訪れているだけでは、それぞれの持つ不思議には気づかない。

次に、smtの中でかくれんぼ。大声を出さない、走らない、見つけた合図と、見つかった合図というルールを決めただけで開始。smtがもともと想定してない「隠れる」という利用方法に最適な場所はどこ? こんなふうに、普段と違った空間の使い方をしてみると、空間の持つ意味が変わってしまっていることに気づく。つまり私たちはたった今空間に新たに意味づけしている最中なのだ。隠れるという行為は、なんだかさっきの探検に似ている。私はテーブルの下に隠れて、鬼が来るのをドキドキしながら待った。見つからないように、でも見つからなかったらどうしよう。見つかるために隠れているみたい。

最後に「ここにこんなものが隠れていると楽しいだろうな!」とみんなで作った、ロボット、かわいい子猿、欅の森の小鳥たち、水族館の魚たちなどをsmtに隠していった。緑色の机に目と口だけ描き、机を長くクネクネ連ねてヘビの様にしたり、横に張っているワイヤにミニチュア登山者をしがみつかせたり。隠すというより、日常の中の一部分だけを変身させるような行為。するとそれを取り巻く周囲は新しい意味をまとって生き生きとし始める。変身させられたものは、せっかく変身したんだから見つけられる時を今か今かと待ってるんだろうな。さっきのテーブルの下の私のように。

さりげなく隠された手作りのものが、近未来的な建物にぬくもりと優しさを感じさせてくれた。と同時に、日常の生活や場を振り返り、ふだん何気なく見ているものを、ちょっと見方を変えてみたら、日常が変身して私たちの前に新たな姿で現れてきた。よく見る、考える、イメージする一日だった。学校、家、街などどこでもやってみるときっとたのしくなるのだろうな。