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せんだいメディアテーク
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一緒に育つ場所写真

フィルムライブリーの空調の効いた部屋で眠っているフィルムやビデオたちは時々ひとりで旅に出る。沖縄や北海道の映画祭に行ったり、東京の上映会にはよく出かけたりもしている。中には海外に行く連中もいて、春先旅立ったフィルムなどはイタリア、フランスと巡り今も旅の途中である。彼らがどんな場所で上映され、どんな人々を出会っているかと想像を巡らすのは楽しい。今回はフィルムやビデオたち10本をsmtに連れ出した。人間同様、時々は外の空気に触れさせなければ、というわけではないが…「キャメラのむこうにある<リアル>」と題したドキュメンタリー映画の上映会が、先月の20―23日、smtで開催されたからである。

今回、初めてsmt にやって来たフィルムやビデオたちの評判はどうだったのだろう、どんな人々に出会ったのかとアンケートを読んでみる。広報や上映時間の設定のしかたに問題ありと反省を促す意見や、面白い、これからも続けてほしいという嬉しいコメントもあった。さらに、ふんだんに盛り込まれた作家の意図や考えに圧倒されてしまった人、退屈しながら見ていた人もいるはずである。でもこうした好意的な感想が得られたことは、フィルムやビデオたちも出かけたかいがあったというものだ。

上映会に集まった人々は、smt のポスターやチラシを見てきたという人が圧倒的に多かった。彼らはsmt の常連さんなのか。それともたまたま見つけたチラシに興味をもってくれたのか。どちらにしても、smt が準備室の頃からジワジワと築き上げてきた「場」の力が働いている。何かを"発見"する喜びや達成感は、この「場」の力なのかもしれないし、職員よりも滞在時間が長いへヴィーユーザーを生み出してしまう居心地の良さも「場」の力が作り上げているのかもしれない。

ともかくこの建築は様々な概念を覆し、柱がチューブ、壁はガラスや布、床は鉄板を連ねて熔接、地震の時には耐震装置が働いて静かに揺れるという、さながら都市空間に浮かぶ船の趣きがある。大航海時代の話しを持ち出すまでもなく、船はしばしば"発見"の道具であった。船のようなsmt に乗って様々な体験をすることは、とても刺激的であり高揚感もある。そのなかで小さな発見が山と生まれているに違いない。今回の上映会でドキュメンタリー映画を"発見"した人もいるだろう。未知なるものへの興味は尽きない。また来年、別のフィルムやビデオを連れてsmt に出かけようと今からその日が楽しみだ。