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せんだいメディアテーク
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「ライブラリープロジェクト(以下LP)」は、図書館で本を借りるようにアート作品を借りることのできるプロジェクトです。2002年12月には、3階仙台市民図書館で開催されたほか、smtとの共催事業以外も含めると、2階以外の各階で行われたことになります。smtはフロアごとに使われ方やたたずまいが異なりますが、これほど多くの階で1つの企画を展開した例は今までにないでしょう。従来の展示形式と異なるこの企画はsmtのようなメディア・ミックスを目指す施設だからこそ実現できたのだと思います。とはいえ、図書館という完成されたシステムの中で作品の貸出しをすること、企画・活動支援室+図書館+A-pleの連携など、新しい試みは様々な問題の噴出と解決の連続でした。

当初、A-pleでは「smtは全体で1つの大きな図書館である」といわれる考え方に利用者の理解があって、3階図書館でLPを実施したらさぞや反響があるだろうと予想していました。しかし実際は、3階で22日間貸出を行い86作品が貸し出されたのに対し、期間がわずか5日間だった5階の貸出は55作品。統計からは期間が4倍以上であるのに、図書館の貸出がそれほどでないことがわかります。これは、利用者が目的別に階を利用していることを示すと共に、部分としては活用されているが、一体となった認識が希薄であることが読み取れます。

極端な例ですが、ディズニーランドの中にはジェットコースターや映画館、ショップからホテルまで様々な施設があります。しかし人々はジェットコースターだけを目的に訪れるのではなく、ディズニーランド全体を楽しんでいます。それはディズニーランドという全体像が人々に伝わっているからだと思います。

様々な情報を人々と共有し、そこから新しいものを発信することを目指すsmtが、ディズニーランドのような確固たるいわば固定化された全体像を目指すことは難しいだろうと思います。LPのような外部からの働きかけに対してフレキシブルに対応し、応援することが「芸術を鑑賞しに行く」「本を借りに行く」という決まりきったことに収まらない、ユニークで新しい複合施設を提示していくカギになるのではと考えます。