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せんだいメディアテーク
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豊饒な循環への意志写真

「メビウスの卵」仙台展は、 1995年から毎年、仙台実行委員会が続けてきた「見て、聞いて、触れて、五感で体験するアート&サイエンスの展覧会」であり、2001年度からの3回が、smtとの共催で開かれた。1991年に始まった本展は、現在では毎年、日本中を循環している。巡回、ではなく循環と書いたのは、展示がそのまま移動するのではなく、各会場が地元の実行委員会を持ち、オリジナルな企画と運営を行っているからである。こういう運営方法を採ることで、参加体験型の新しいアートを作ろうとしている各地の人々が結びつくことが可能になった。

たとえば、今夏の仙台展には、北陸、関西、関東の各エリアから出品が多かったし、10月の多摩展(東京)には仙台から数作家が参加する(この内2点が、smtでの「せんだいアートアニュアル」が機縁になっていることを特に記しておきたい)。毎年、この「循環する展覧会」の輪の中を、順繰りに作家たちが加わり抜けていくような形で続いている。1回の展覧会で出品作品の約半数が入れ替わる。まさに、運営そのものがメビウスの輪のような構造だが、この「輪」が築けたことで本展は「展覧会でもミュージアムでもない、終わりなく変わり続けながら、全国を還流する」ものに近づいている。

このループは、アーティスト、科学研究者、教育者などが各地から集散して、情報を交換していく場でもある。こうした構造は日本内部よりは外から注目を浴びて、海外の科学館関係者から、展示作品と同時に運営方法に関心をもたれることも多い。現在、われわれは、近い将来、東アジアの作家や海外のミュージアムをこのループに迎える日に備えている。

米国ワシントン大学と連携したワークショップ企画や、東北大、宮城教育大など国公立も含む大学(理系、美術系)の人材も参集してきた仙台実行委員会とsmtの活動は、その独自性によって、こうした将来の、より大きなメビウスの「輪」の先触れにもなっている。