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「いま、バリアとはなにか」

情報技術の進展によって、私たちは時間差のない通信手段を獲得する一方、その技術に身体を適応させられています。合理主義的に進められるコミュニケーションのなかで、私たちは、内省的な深い考察が生み出す時間的な間や表現上の質感を発揮できなくなっているのではないでしょうか。そして、平滑で無機質に整形された情報は、グローバル化された消費社会の価値観とともに、個人や文化の固有性すら消失させるかのような振る舞いをみせています。現に身体の差異や存在性は、情報技術とは関係なくあるにも拘らず、それがもたらした世界観では、不都合なバリアは解消されてしまったかのようです。2000年以後のこのような状況の中で、10周年を迎えるせんだいメディアテークでは、情報化とグローバル化の中におけるさまざまなバリア(身体、言語、性差、民族、空間など)をめぐるリアリティを、次世代を切り開くためのアートとして表現していきます。

展示1―消費社会と均質化を乗り越えるアートの夢―

10周年事業の中核として、美術作家の小山田徹と藤井光が6階ギャラリーの1000㎡以上ある空間全体を使ったダイナミックなインスタレーションを発表します。

小山田徹は、世界的に高く評価されているパフォーマンスグループ「ダムタイプ」での活動後、バザールやカフェなどコミュニティのための共有空間の設計・開発を行っています。藤井光は、映像メディアを用いながら、資本主義社会の歪みなど現代社会の問題点を深く切り取る表現活動を行っています。この展覧会は、両者が現在におけるバリアについての考察をもとに、仙台でのフィールドワークなどを通して集められた大量のモノや映像素材を用いて6階の空間に共同でもう1つの都市仙台を描き出します。

10月23日(土)―12月26日(日)
10:00―19:00(光のページェント点灯以降は21:00まで)

*10月28日(木)、11月25日(木)は休館

小山田徹 浮遊博物館 2009年 小山田徹 浮遊博物館 2009年
藤井光 chapter1 2005年 藤井光 chapter1 2005年
展示2―バリアとしてのアート、アートが溶かすバリア、アートが活かす空間―

メディアテークの館内は目的別に壁面で区切られた空間ではなく、公共空間としてさまざまな目的を持った人が行き来し、情報が交差する場所です。そして新たな出会いが、次の発見と学習につながることを期待されています。このようなメディアテークの空間をより豊かに活性化するために、ギャラリーにとどまらず、館内のいろいろな場所にアートを展示し、人や芸術への出会いの交差点を増やしていきます。公共空間に入り込んだ芸術は私たちに多くの発見をもたらしてくれるでしょう。展示する作家は空間演出やメディアによる表現を得意とする、北川貴好、石橋素+真鍋大度を予定しています。

9月―12月

北川貴好 吉島庭園プロジェクト 2007年 北川貴好 吉島庭園プロジェクト 2007年
アートプロジェクト―既知の世界から未知の世界への跳躍―

アーティストと一緒に表現活動を行い、体験することでアートへの理解を深めていくプログラムです。コンピューターを使った音楽表現で世界的にも評価の高いフォルマント兄弟(三輪眞弘と佐近田展康によるユニット)と、視覚にたよらない全盲の美術作家光島貴之が、私たちの社会を取り巻く課題をプロジェクトとして取り上げ、参加者とともにアートとして表現していきます。機械音声と人声、伝統の祭りと現代の祭り、視覚芸術と触覚芸術など、異分野の交差によってバリアを照らし、その融和を図っていきます。

5月―12月

フォルマント兄弟 フォルマント兄弟