自明を問い直す
2008 年 12 月 14 日 日曜日お早うございます。初めまして。
アテンドをさせていただいている山川秀樹です。京都から来て、今日で仙台滞
在七日目の朝を迎えています。
当初はすべてが初めてで何かとたいへんでしたが、アテンド四日目の後半ぐら
いからはかなりアテンドすることにも慣れて、お客さんとお互いの感性や気づき
を、分かち合うことができてきているようにも思われます。
ぼくなんかにとっては、事物に触るということは、極当たり前の日常的な営み
であり、いわばあえて問うことのない「自明」の事柄のように認識してきました。
また、ほぼ生まれたころから見るという営みには無縁なぼくには、見える世界は
いわば未知のゾーンなわけです。
ところが、お客様の中には、最初は目に入った事物や画像の様子を口にしたり、
各々の作品の前で立ち止まってその作品を見つめたりはするものの、なかなか触
ったり手に取ったりなさらない方がままいらっしゃいます。けれども、ぼくが作
品に触れて、その手触りから思い出す体験や過去に触った事物について語ったり、
説明を受けた画像から妄想する作品についての物語を語ったりすると、そうした
お客様が作品に積極的に触り始めたり、自らのことばや態度でその作品に触れて
みて感じたり気づいたりしたことを表現するようになる、そんなシーンがまま見
受けられるように思います。
お客様の多くにとって「触る」という営みは、決して日常的な営みでも「自明」
の事柄でもないのだ、ということに改めて気づかされるここ数日です。そして、
お互いの感じたり気づいたりしたことをシェアーする作業を通して、ぼくもお客
様も、その自らの「自明の感覚世界」から、ほんの少しずつ解放されていってい
るのかもしれません。
そして、そうした共同作業の積み重ねの延長線上に、自らの自明の世界を問い
直したり捉え返したりしつつ、新たな共生のための地平を育む地歩が創造される
ことを祈念して、後半のアテンドの期間を勤めたいと考えています。
まだいらしていないみなさん、ぜひお越しくださり、ごいっしょに楽しいひと
ときを過ごしましょう。
それではまた。