研修のねらい(研修応募論文より)~(仮称)せんだいメディアテークについて

研修のねらい(研修応募論文より)
~(仮称)せんだいメディアテークについて

 平成12年度の開館をめざして準備が進められている(仮称)せんだいメディアテークは、図書館、ギャラリー、映像メディアセンター、視聴覚に障害のある 市民への情報提供などの機能を、「メディア」を通じて豊かに包み込み、「バリアフリー」に融合しようとするものである。それよって地域の芸術文化、生涯学 習情報をネットワークし、かつ蓄積して、市民ひとりひとりの関心や興味にそった主体的な活用を可能にし、仙台が世界に向けて文化を創造し発信できる街とな るための基盤を整備する。また、従来の一方向的な「サービス機関」として公共施設のあり方を見直し、市民が、専門家やアーティストと一体となってさまざま な知的・創造的活動を進め、お互いに支援しお互いに活用しあう、生涯学習時代にふさわしい「双方向的」な市民活動の場となることをめざしている。

 こうした考え方は、以下のふたつの認識に基づいて構想されたものといえる。ひとつは、21世紀の情報化社会において、生涯学習や芸術文化についての情報 がますます重要性を増していくという考え方である。その中にあって、地域文化の活性化のために、地域住民が世界の膨大な文化情報を取得できることはもちろ ん、地域の情報を蓄積し活用するとともにそれをリアルタイムに世界に発信していくことが不可欠なのである。

 もうひとつは、インターネットをはじめとする新しいメディア環境の進展が予測させる、21世紀の市民社会の根本的な構造変革の可能性をふまえた考え方で ある。すなわち、ネットワークされた情報環境の個人レベルへの浸透は、従来の階層構造的な政治的・経済的な組織を解体し水平化するとともに、社会全体をあ くまで個人同士のさまざまな繋がりによって織りなされる構造体へと変えてゆく。いわば直接民主主義的な市民社会が再び形成されると考えられるのである。 ネットワーク社会においては、複数の職業を持ち、複数の学習活動やボランティア活動を行うことが、現在とは比較にならないほど容易に実現できる。会社が従 業員を丸抱えにする必要も必然も弱まり、また個人も自らの求めるところに応じてさまざまな社会的な活動を展開できるようになる。それは時に経済活動であ り、また時にNPO的活動でありうる。これこそまさに「生涯学習社会」の本質であり、目指すところなのである。

 メディアテークは、このような市民社会の変化を先取りし、それにふさわしいフレキシブルな市民活動の場となることをめざしている。また、そうした市民の 力や、ネットワークしうるさまざまな専門家たちの力をとりこむことによって、一方向的なサービス事業としてはコスト的にも人的にも極めて困難であった、情 報の蓄積をはじめとする壮大なプロジェクトを実現しようとしているのである。1996年5月に答申されたメディアテーク・プロジェクト検討委員会報告書で は、これをメディアテークにおけるワークショップ活動と名付け、メディアテークのもっとも重要な活動形態と位置づけている。さらに、これはひとりメディア テークの問題にとどまらないことは言うまでもない。情報化にともなう市民社会の変革は、地域の生涯学習社会の形成や芸術文化の振興を検討するにあたり最も 重要な政策課題であるばかりか、自治体行政全般にわたる「公共事業」のあり方をめぐる根本的な問いかけを含むものである。

 以上のような構想にもとづいてメディアテーク建設事業を推進していくにあたり、海外における活動や事業等の先進例を実地に見聞し、現時点で把握しうる具体的な問題点を明らかにするとというのが、今回の研修の目的である。
また同時に、インターネットを通じた情報や電子メールのやりとりを前提とした国際的な交流が、現時点でどの程度実際的たりうるかに ついて試みるために、事前のアポイントメントや旅行中の連絡調整をできるだけインターネットを活用することとする。

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