2019年07月15日更新

本展覧会の特徴


▶地元宮城では初の大規模展 市民提供のタンス数十棹を使用した大型のインスタレーションも展示

 青野文昭は90 年代から作家活動をスタートし、現在まで国内外で旺盛な作品発表を継続しています。本展は、作家の出身地である宮城県で初の大規模な個展となります。青野の生誕地である仙台市八木山を中核に据えた新作インスタレーションをメインとしながら、初期からの作品も紹介する回顧的な意味あいも持つ展示となります。
 今回のインスタレーションは、市民から提供されたタンス数十棹を使った巨大な作品になる予定で、作家としても過去最大規模です。この作品を中心に、フロア全体を一体的なインスタレーションとして構成します。

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会場レイアウトのプラン

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本展のための制作風景(作家アトリエ)

▶時を経たモノから物語を紡ぐ「なおす」で全国的に注目 

 青野は1996 年から道などで拾った日用品の断片を「なおす」という作業を始めました。これは、元のかたちに近づける修復ではなく、その断片自体のフォルムや色、模様を延長していくというもので、目の前にあるモノとの対話から作品制作をスタートさせるという青野の作風の原点がここに示されています。
 その後も、新たな手法を編み出しながら作品制作を続けていましたが、2011 年に東日本大震災が発生し、青野も被災します。当初、青野は震災テーマで制作する意思を持ちませんでしたが、親族の実家である岩手県宮古市を訪れ、風景の消失を実感したことをきっかけに、被災物を使用した作品の制作に着手します。
 当初は震災前の作風を継続していましたが、そのうちに衣服や靴の使用、人型のフォルムの出現など、「人」の存在が強調される作品が現れはじめます。震災という多数の命が奪われた経験、そして被災物からいやおうなく伝わる人の気配が、作風に影響してきたとも言えるでしょう。
 「人」の出現で、作品から想起される「物語」はより生き生きと雄弁になり、観る者の想像力をかきたてます。震災後、東北・宮城を拠点として、さらに進化し続ける青野の作品も展示でご紹介します。

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「なおす・代用・合体・乗っ取り「震災後ゆりあげで収集したカセットテープの復元(カセットテープ/文庫本)」(2012年)

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「人のおもかげーさまざまな靴より」(2018年)

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「水源をめぐるある集落の物語:東京ー吉祥寺・井の頭 AD2017~BC15000」部分(2017年)


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