報告 2025年01月15日更新

【レポート】1月11日(土)てつがくカフェ plus


【開催概要】

てつがくカフェ plus 「日常と非日常」を考える

日時:2025年1月11日(土)14:00〜16:00

会場:7f スタジオb

ファシリテーター:牛澤岳(てつがくカフェ@せんだい)

ファシリテーショングラフィック:浅利信太朗(てつがくカフェ@せんだい)


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今回は、「日常は枠で囲われており、その枠から外れることが非日常なのではないか。またその枠自体も再構築されるのではないか」という指摘から対話が始まりました。日常には安定や秩序がある一方、退屈に感じてしまうこともあります。非日常は新鮮でエキサイティングでありながら、適応のストレスが伴うこともあります。日常と非日常、それぞれの良い面と悪い面を行き来する状態は、社会的なホメオスタシス(恒常性)と言えるのではないかという指摘もありました。

動物や虫に比べ、人間には非日常を好む性質があるのではないかという意見も出されました。人間は、まだ起こっていない出来事やそのメリットを想像できます。「旅」のように、非日常へ向け計画を立てたり、スリルという小さな非日常を求めたりすることが日常的に行われています。戦争や災害もちょっといいなと思うといった声もあり、日常と非日常が反転する「異世界転生もの」が流行っているのも非日常を求める心性に原因があるのでは、といった意見もありました。

日常と非日常の境目についても話題になりました。政府がコロナを5類に指定したことで日常が戻ってきたと見なされている一方、まだ非日常として捉えている人もいます。学校の給食の時間では向かい合わずに食べることが定着し、「向かい合って食べることは恥ずかしい」と思う子供も出てくるなど、非日常をきっかけに日常が変わってしまったということも話されました。

また、東日本大震災の際には、津波や地震で町が破壊された非日常的な状況の中でも、寝る・食べるといった日常の営みがあり、日常と非日常は単純に分けられるものではないという指摘もなされました。ある参加者からは、ひとつひとつの行為の性質とその割合によって、総体として日常と非日常が判断されるのではないか、という意見も出されました。器のようなものに「食べる」や「寝る」といった行為がいくつも入っていて、日常の性質をもつ行為が多い場合は日常、非日常の性質をもつ行為が多い場合は非日常と、割合で判断されるのではないかという指摘でした。

日常と非日常は個人の中で相対的なものであるといった意見が出された一方、社会といった観点から日常を考えた参加者もいました。社会やルールによって個人の日常が守られている、もしくは縛られているのではないか。戦争やコロナという非日常に際し、日常と非日常のバランスやその境界が個人と社会で食い違うこともあるようです。そういった場面で社会がどんな役割を果たすべきなのか、そもそも日常と非日常という文脈において、個人ではなく「社会」が主語になり得るのかなどさまざまな意見が出されました。

これまでの対話から、「適応」「コントロール」「境目」「社会」「慣れ」「順化」「想像力」「スリル」「ルールを破る楽しさ」がキーワードに挙がりました。それらになぜ着目したのか、理由を確認しながら、次のような問いが立てられました。  


  ・日常と非日常を図で表すと
  ・適応しなければいけないルール、非日常[とは]
  ・なぜ人はスリルを求めるのか
  ・震災とコロナはいつ収束する(した)のか
  ・人は日常化に抵抗して生き続けることができるだろうか
  ・ルーティーンワークでワクワクすることは可能か
  ・社会が個人に非日常を強制できることはあるのか


また、「社会が個人に非日常を強制できることはあるのか」から派生して、次の問いも生まれました。


  ・日常と非日常を分けるのは個人か社会か
  ・個人は社会の一員なのか、対立するものなのか
  ・[日常と非日常を語る際に]社会は主語になるのか


これらの問いを吟味し、ひとつの問いに収れんさせることはできませんでしたが、「死刑は、社会が個人に非日常を強制していることの例として挙げられるのではないか」といったように、いくつかの問いに答えることが試みられました。

全体をとおして、個人の体験に根差した具体的なエピソードが語られながら、話の流れや言葉の意味が反転する瞬間があり、良い対話の時間になったようでした。

最後に、対話の進め方を振り返り、進行についての感想や意見をいただく時間を設けました。自分の言葉を受けとめてもらったことに対する感謝や、小グループで話す時間を設けてはどうかといった意見が出されました。今後の運営に活かしたいと思います。

(文責・てつがくカフェ@せんだい)

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