報告 2016年05月05日更新

「宍戸大裕監督新作鑑賞会&意見交換会」レポート


 4月14日(木)夜に宍戸大裕監督最新作『百葉の栞 さやま園の日日』(ひゃくようのしおり さやまえんのひび)の鑑賞会&意見交換会を行いました。

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 元々知的障害者の入所施設である東京都同胞援護会「さやま園」からの依頼を受け、施設に寝泊まりしながらキャメラマンの高橋槇二さんとともに1年4ヵ月にわたる撮影を続けた宍戸大裕監督。園には作品として還元することができたものの、今の形のままでは「園の記録」に留まっていて、映画として世の中に訴えるには弱いのではないかとの疑問が残ったそうで、今回何が足りないのか、映画として伝えたいことを伝えるためにはどうしたらよいのかを確認するための場としてみやぎシネマクラドルを活用していただきました。

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▲宍戸大裕監督

 そのような前置きを受けて観始めた映画ですが、そこには入居者の普段の生活、職員の業務、園の周辺で活動している人びとの姿がフラットな視点で細やかに映し出され、あたかも観る人がその現場に立ち会っているかのような素晴らしい映像(それも場に溶け込んでジッと待つことによって初めて撮れる力のある映像)がたくさん散りばめられていました。その柔らかさと喜怒哀楽の豊かさゆえに、こうした世界を全く知らない人や子どもにも見せられる映画になるのではないかといった声もあがりました。

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 一方で、宍戸監督ご自身も「伝えたい一つのことから逃げて百のことを言っている」と発言されているように、作家の根底にある意図がはっきり見えてこないところもあり、どういう視点で観ていけばよいのか、(シーンの取捨選択も含め)観る人が自分のことに置き換えるための工夫が必要との意見も出ました。そして今回議論の最大のポイントになったのが、その伝えたい一つのことが「社会を変えたい」という動機から出てくるもので、そのための手段として映画を作ることに、果たしてどのような可能性や限界があるのかについて熱い議論が交わされました。

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 これについては作家のスタンスの問題で、どちらが良い悪いの話ではありませんが、今回の鑑賞会&意見交換会を通して、参加した方々がそれぞれに映画製作そのものについて考えるとても良い機会になったと思います。そして宍戸監督の作品もこれが本当の完成ではありません。ここで吸収したものを作品に反映させ、本当にやりたかった形をまた観せていただきたいと思っています。これは間違いなく素晴らしい作品になる。誰もがそのことを確信しながら主体的に意見を交わした夜でした。

 というわけで宍戸監督、今回は本当にお疲れ様でした&ありがとうございました。みやぎシネマクラドルは作家と市民が共同でネットワークを広めていくため会ですが、こうして作家同士助け合うための会でもあります。興味のある方は是非次回参加していただければと思います。よろしくお願いいたします。(我妻)


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