2014年10月08日更新

展覧会趣旨


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 東日本大震災の後、まもなくして、せんだいメディアテークは、この未曾有の出来事を映像などで記録する活動「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(以下、わすれン!)をはじめました。せんだいメディアテークは、メディアとは何かということを確認しながら、その活用を実践していく場所です。震災に直面した当館は、その役割に立ち返り、TVや新聞には扱われようのないほどに繊細な、被災下の日々の生活を記録しようと考えました。「わすれン!」は、専門知識の有無に関わらず、記録を公に開く意志を持った人が参加する仕組みです。ですから技巧的な演出よりも、被災下の生活者の目線に沿うことを大切にした記録が多く、それらには災害と向き合う人の姿が自然なかたちで現れています。

 メディアテークではこの活動をとおして、普段は無自覚的な情報の消費者であるわたしたちが、自ら意識的にメディアを用いることで、メディアによって拡張された自分の身体を再発見できるのではないかと考えました。そして、最新のメディアに身を任せ、操られるように振る舞うのではなく、人間の身体を基本とした日々の生活の中に、それらの技術を再配置することへつながるのではないかと考えたのです。

 2011年から12年にかけて、このような震災後のメディアテークの活動に賛同して集った人たちの拠点となるべく、「わすれン!」のスタッフのひとりが自宅を共同生活場所として開いていました。毎晩その台所では、記録や表現について議論が交わされ、やがてそれはすぐれた活動成果へと結実していきました。生活の重要な部分をつかさどる台所には、衣食住と表現活動を不可分とする身体の本質が現れてくるのかもしれません。本展では、このような充実した対話の場としての生活空間の可能性を展示として活かし、「わすれン!」の記録と対面する、映像のための家をつくり出します。そして、さまざまな記録映像と連続する生活空間のなかに、震災を経たいまこそ希求される「メディア・リテラシー」(メディアの読み書き能力)の切実な在り方を問いなおそうとするものです。


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