報告 2012年08月05日更新

第13回てつがくカフェ「震災を〈記録〉するということ」レポート・カウンタートーク


【開催概要】
日時:2012 年 8 月 5 日(日)15:00-17:30
会場:せんだいメディアテーク 1f オープンスクエア
話題提供:甲斐賢治(せんだいメディアテーク企画・ 活動支援室室長)
(参考:https://www.smt.jp/projects/cafephilo/2012/08/-2-19.html


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第13回てつがくカフェのテーマは『震災を〈記録〉するということ』でした。
今回はせんだいメディアテーク企画・活動支援室長の甲斐賢治さんを招き、同館では、どのように震災を記録しているのかについてお話しいただきました。内容としては、震災後に立ち上がった「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(以下、わすれン!)が発足した経緯と集まった記録についての説明と同時に、現代のマスメディアによる簡略化された情報ではなく、要約できない映像の大切さについて30分ほど、映像紹介を交えて話してくれました。



その後は、わすれン!以外の震災記録も含めて話し合いました。会場からは「震災の記録資料はさまざまな場所で多くの人が見ることができるよう仕組みを広げるべき」という意見や、「沿岸部で被災した当事者は記録映像を見たくないのでは」など、参加者の方々が感じている意見が上がりました。


話題提供者の甲斐賢治さん



しかし、様々な意見が会場から出たものの、それぞれの方が「記録」や「記憶」に対して持つ価値観が異なっていました。そこで、議論に明確さを求めようと「記録」と「記憶」を区別する明確な定義づけを行うこととなり、ここから、議論の流れは根本的な問い、哲学的な問いへと変わっていきました。「記録」の語に関しては、「伝え手がいなくても残るもの」や「自分の意志で残したもの」という意見が上がる一方、「記憶」の語に関しては、「伝え手がいなければ伝わらない」や「意思とは関係なく残ってしまうもの」という意見が上がりました。普段の生活ではあまり考えない言葉の定義づけということもあり、会場の参加者は言葉の意味を曖昧なまま使用していたと気付き、明確にしようと試行錯誤を繰り返していました。ファシリテータの西村高宏さんは、この答えのない問いを考えている際のモヤモヤを「気持ち悪い感覚」と表現していましたが、同時に、その感覚を持ちながら問い続けることの重要さも感じられる時間でした。





白熱した議論が展開された結果、いちおうこの場では、「記録」という語は、主体的だがモノ(映像や写真)の側面が強くなり、「記憶」という語は、内なるもの・リアリティ・身体的・受動的と定義づけされました。記録の場合は主観的な記録であれ、客観的であれ、アプローチにより変わるのではという見方も出ました。こうした言葉の定義づけを踏まえて、「記録のあり方」や「記録は人を救えるのか」という問いが出てきました。会場からは、これらの問いに対して様々な意見が上がりましたが、ここで時間切れとなりました。



てつがくカフェではこの問いを各自持ち帰り、普段の生活でも考えることが大切であるというスタンスをとっています。その後のスタンスといって良いのかはわかりませんが、哲学的な問いは「ひらめき」で答えがでるほど簡単なものはありません。てつがくカフェで得た視野や問いを使いこなし、自分自身で考え直していくことこそが、ここで議論する意味であると思います。「言葉の定義づけ」で感じたモヤモヤ、気持ち悪い感覚、これらを感じながら、新たな世界・視野・問いの発見がしたいと思った方は、ぜひ次回も参加して欲しいと思います。

てつがくカフェはスタッフのみではなく、参加者の方々も共に作り上げていく議論の場だと思います。ここでは参加者の方々もスタッフも1人の人間として参加することになります。経験の度合いが多かろうが少なかろうが関係ありませんし、何度も参加している方と、初めて参加する方の間にも上下関係は存在しません。お互いに意見を言い合い、持論を深め合う環境こそが、いい対話の場ではないでしょうか。これからもみなさんと「問いの空間」をつくりあげていきたいと思っています。よろしくお願いします。

報告:長井太(てつがくカフェ@せんだい)

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黒板まとめ


黒板1枚目、2枚目



黒板3〜5枚目



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◎「第13回『震災を〈記録〉するということ』」カウンタートーク

カフェ終了後に行ったスタッフによる延長戦トークです。以下より視聴できます。








*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=550#report


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