報告 2013年11月10日更新

第26回 てつがくカフェ「愛について」レポート


【開催概要】
日時:2013 年 11 月 10 日(日)15:00-17:00
会場:せんだいメディアテーク 6f ギャラリー4200
ファシリテーター:西村高宏(てつがくカフェ@せんだい)
(参考:https://www.smt.jp/projects/cafephilo/2013/11/26-.html


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11月10日に行われた第26回てつがくカフェのテーマは「愛について」でした。今年度初めて、震災とは結びつけないテーマとしました。今回は6階に場所を移し、また現在同じ階で展示されている「LOVERS 永遠の恋人たち」と関連させて対話を始めました。展示に使用されている規則的な電子音をBGMにしつつ、広々とした空間の中で、その間を確認していくかのように、しっかりと対話が続いていきました。普段の会話で多くは口にされないのに、歌詞やキャッチコピーではやたら登場する「愛」。どんな言葉が交わされたのでしょうか。

まず前半において、いま社会には愛がないのではないかという意見から口火が切られ、愛の反対は無関心というマザーテレサの言葉が出てきたり、自己愛、家族愛、無償の愛など様々な種類の愛が登場したりしました。また、人間は愛することはできるけれど、動物にはそれができるのか、機械に対しては愛着は湧くけれど愛する対象にはならないのではないかという、愛する主体と対象について議論がいくつか生じました。各人が、愛を言いかえる言葉や、自己愛があることによって自分が大事にできるのではないかといった愛によってできることなどを表現する中、私たちは愛という言葉に期待しすぎているのではないかという、懐疑的な意見も出てきました。さらに、ルールを守るということも自分への愛ではないかというユニークな表現も出てきました。

積み残しを気にしながらも、次にキーワードを抽出する作業に入りました。これは前半に出てきた一見ばらばらな言葉を整理しつつ、次のステップである問いを立てる作業につなげるものです。そこで出てきたのは「損得感情」「無償の愛」「恋愛感情」といった愛そのものに関する言葉、「受ける者/発する者」「人間/動物/機械」「神、仏の愛」といった主体や対象に関する言葉、そのほか「関係性」「関心」「ルール」「余裕」「エロス/アガペー」という愛を解きほぐすのに必要そうな言葉が挙げられました。



そしていよいよ問いを考える作業に進んでいきましたが、普段ならうんうん唸るこの時間が、他の回と比べてテンポよく言葉が出てきたように感じました。それは愛があまりにも身近なものだからなのか、それとも愛があまりにも疑問の多いものだからなのでしょうか。「愛はよいものなのか」という一般的にポジティブイメージのある「愛」に疑問を投げかける問いが注目を集めながらも、多数決により残り時間で問うていく問いは「愛は自分のため/他人のため?」というものになりました(もちろん多数決で問いを一つに決めたのはファシリテーターにとって苦渋の決断でした)。

「愛は自分のため/他人のため?」これを問うにはまず「愛」という言葉の定義を明らかにしなければなりません。そもそも愛ってなんだろう―関係性の中にあるもの?当事者意識によるもの?与えられた人が認めるもの?行為にならないとわからないもの?時間内に定義をまとめることはできませんでしたが、恐らく「愛」の定義は丸1日かけても近付けるのか不明なほど、巨大で掴めないでしょう。では、こんなに話したのに、もともと抽象度の高い「愛」というものを言い当てる言葉を探す行為には、果たして意味はあるのでしょうか?

私たちは「ある」と答えなければなりません。私たちの多くは哲学者ではないけれど、しかし言葉を使って考え続けることで何かが変わるかもしれません。他人の言葉とぶつかり、混ざることで、どんどん思考の泉が掘られていきます。ふとした瞬間の驚きで、世界の見方も変わるかもしれません。それがたとえ、お風呂の水を1秒早く止める程度の変化でも、自分が発達していく以外に他の何も変わっていくことはないのだと私は思います。そういう小さな変化のきっかけの場として今後もてつがくカフェが利用されていけば幸いです。



参考資料リンク(2010年12月26日開催 てつがくカフェ「バリアとはなにか」レポート)
http://prj.smt.jp/~gobantubecafe/?cat=80

報告:房内まどか(てつがくカフェ@せんだい)
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◎ カウンタートーク

カフェ終了後に行っていたスタッフによる延長戦トークです。以下より視聴できます。

http://recorder311.smt.jp/series/tetsugaku/





*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=5074#report


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