報告 2014年12月28日更新

〈3.11以降〉読書会-震災を読み解くために-第19回レポート


【開催概要】
日時:2014 年 12 月 28 日(日)17:00-19:00
会場:せんだいメディアテーク 7f スタジオa
(参考:https://www.smt.jp/projects/cafephilo/2014/12/3-11--19-2.html


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写真1

今回は読書会ではじめて"小説"を取り上げ、どんな対話になるか楽しみにしながら当日を迎えました。参加者には事前に課題本『聖地Cs』木村友祐著、(新潮社)を読んできていただいており、最初に本を読んだ感想を話し合うことから読書会は始まりました。 物語全体から、社会の役割を失った時に何が残るかについて考えたり、震災の本当の姿をとらえきれていないと感じたという意見もある一方で、印象に残った場面や登場人物について語ってくださる方もあり、参加者それぞれに読み方の違いがあることを感じました。物語には原発事故の影響で被爆した牛がでてきますが、生きようとする牛のリアルな描写が印象に残ったという意見や、牛も人も資源として消費される世界で、消費される価値のなくなったものの尊厳についてはあまり考えてこられなかったのではないかという意見も語られました。

写真2

後半は少し話題を絞り、物語の登場人物について話し合いました。殺処分を命じられた牛を生かし続けながら渋谷で街頭演説を繰り返す牧場主のしたたかな強さや「なかったことにしたくない」という思い、社会的な"弱者"として描かれている主人公が牧場へボランティアに来てからの変化や最後に「高らかに笑う」場面をどう考えたかなどが話題になりました。参加者のいろいろな視点からの話を聞くことで、自分で読んだときにはあまり印象に残らなかった登場人物にもそれぞれの立ち位置があることがわかり、物事の見え方も違ってくることに気づかされます。もう一度小説全体をふり返り、それぞれの主義主張によって人は役割をもつこと、生き方を選ぶことは何かをあきらめることでもあることが描かれているのではないかという声がありました。

写真3

次回も引き続き同じ本を取り上げ、"この本に書かれているのはどんな物語か?"という問いかけから対話をはじめる予定です。気になる部分を拾いあげ、時には声に出して読みながら、ゆっくりと本を読み進めていきます。読書会では途中からの参加も歓迎しています。ぜひご参加下さい。

写真4

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報告:齋藤さかえ(てつがくカフェ@せんだい)





*この記事はウェブサイト「考えるテーブル」からの転載です(http://table.smt.jp/?p=11327#report


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