2023
03 02
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仙台市民図書館開館
報告 2026年04月07日更新
【レポート】第98回てつがくカフェ
【開催概要】
てつがくカフェ 「経験を記録すること」
日時:2026年3月15日(日)14:00−16:30
会場:せんだいメディアテーク 1f オープンスクエア「星空と路--3がつ11にちをわすれないために--」会場内
ファシリテーター:西村高宏(てつがくカフェ@せんだい)
ファシリテーショングラフィック:近田真美子(てつがくカフェ@せんだい)
今回はメディアテークで開催中の「星空と路」関連イベントとして、震災から15年という節目に、<経験を記録すること>というテーマで対話を行いました。
まずは「記録すること」の意義や、それぞれの実践について意見を交わしました。
ある参加者からは、数十年にわたる日記の習慣を例に、「記録しておかなければ、過去の自分を勘違いしてしまう。記憶のズレを確認するためにも重要だ」という意見が出されました。
一方で、誰のために残すのかという宛先の問題も浮上し、自分のための内省的な記録と、他者と共有するための記録では、表現できることの範囲が異なるのではないかという指摘がありました。
資料館などには明確なメッセージをもった記録がある一方で、震災遺構のように、何も語っていないのに、ただそこにあるだけで何かを感じさせずにはいられない(メッセージ性がある)ものもあるのではないか、という指摘がありました。
それは、誰かの意図(教訓)を受け取るのではなく、物そのものを通して自分なりに読み解くものであり、その受け取り方も人それぞれにひらかれています。
そうした多様な解釈を可能にする空白もまた重要なのではないか、という点が語られました。
さらに、記録に伴う編集の作業について考えました。
生活史を記録している参加者からは、他者の経験を言葉にする際には必ず編集が入り、そこには聞き手の意図が介在せざるを得ないという葛藤が示されました。また、写真のフレームに収まらない空白や、言葉にすることでこぼれ落ちてしまうものはどこへ行くのかという問いも出されました。
対話の中盤では、誰に向けて記録するのかという宛先の問題もあらためて問い直されました。記録の最初の宛先は他者ではなくまず自分自身ではないかという意見や、そもそも特定の宛先を想定していなくても「書き残したい」という衝動や意志がすでに働いているのではないか、という指摘がありました。
これらの対話内容を踏まえて、今後深めていくべきキーワードがいくつか浮かび上がりました。
・意味づけ、ナラティブ、意図
・記録されないもの
・忘れさられるもの
・自分のために
・後世のために
・プロセス(書くこと自体の意味)
・鮮度
・メッセージ
・保存
キーワードを出しながら、さらに「経験を記録すること」を考えていきました。
たとえば、記録とは単なる情報の保存ではなく、意図による取捨選択のプロセスであるという見方が共有されました。また、何かを記録する行為は、同時に記録されないものや忘れ去られるものを不可避に生み出します。その空白や、言語化できない身体感覚がこぼれ落ちていくことをどう引き受けるかが問い直されました。
最後に、ここまでの対話を踏まえて「経験を記録することとは_____である」という定義を考えてみました。
・何かを体験して思ったことを概念化すること
・経験を意味づけにさらすこと
・様々な経験のうち、意図的に選ばれたものを記録し、それを意味づけること
これらの定義を考えたところで、本日の対話は終了となりました。
15年という月日が流れる中で、記録のあり方も変化し続けています。板書の写真を記録として持ち帰り、また一人ひとりの日常の中で「経験を記録すること」について考えを深めてもらえればと思います。
(文責:てつがくカフェ@せんだい)