2023
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コラム 2026年09月29日更新
ディグログ 002:音声「民話 声の図書室 『大崎市三本木の大友かのえの語り』」
せんだいメディアテークが所蔵・公開している写真や映像、音声、読み物などから、当館スタッフが独自の視点でとりあげて紹介するコラム。タイトルは「ディグログ」。資料を掘り起こし・掘り下げ(dig)、その記録(log)として発信していきます。
懐かしい言葉を聞きました。
「むがす、あったづぉんな ほれー」
民話が始まるとき、そこにはたいてい枕詞がつきます。良く聞くのは「むかし、むかし、あるところに...」といった文句。有名なテレビアニメで耳なじみのある方も多いかもしれません。こうした語り出しは地域によって少しずつ違うようで、東北では冒頭のような言葉を使うこともあります。
せんだいメディアテークの事業「メディアスタディーズ」では、2012年から「みやぎ民話の会」の会員有志との協働プロジェクト「民話 声の図書室」を実施しています。
このプロジェクトでは、民話の語り手の声や姿をデジタル記録として保存し公開する活動がおこなわれています。今年の春、大崎市三本木の大友かのえさんの語りが『民話 声の図書室 大崎市三本木の大友かのえの語り』として新しくデジタル化され、6枚のCDがライブラリーに加わりました。
みやぎ民話の会は、1975年の発足以来、土地の人々から民話を聞く(「採訪」する)活動を続けてきた市民団体*です。民話 声の図書室が始まるずっと前から、宮城県の村落を中心に一軒一軒を訪ね歩き、民話の語り手を探してきました。語り手に出会えた際にはお話を聞かせてもらい、再話による民話集の刊行もしています。
かのえさんも、そうして出会った語り手の一人です。1986年からの9年間の採訪の中で、豊かな語りやその生い立ちが聞かれました。
かのえさんは幼少期に、曽祖母や祖母から昔話や子守唄を聞かされて育ったそう。
6枚のCDをとおして、かわいらしい声と優しい語り口で紡がれる80を超える民話やお手玉うたに触れることができます。
私の母の実家も、かのえさんと同じ大崎市三本木です。
こどものころ、夏休みはよく祖父母の家に泊まりに行っていて、夜はいつも三人で寝ていました。まだ眠りたくないとき、決まって私はベッドの横にある本棚から本を取ってきて祖母と一緒にひとときの読書を始めたものです。時間も忘れて読んだのが『読みがたり 宮城のむかし話』。宮城の先生たちが採話した民話が収録された本でした。方言で綴られる昔話は、こどもの私にとって不思議な魅力があったらしく、夜な夜な言葉を追いかけながら、時にその意味を祖母に尋ねたりして、楽しんだものでした。
まだCDからは懐かしい言葉が流れています。
尻なりべらに瓜こ姫、七つ森の伝説...。わくわくしたりハラハラしたり、懐かしい感情が蘇ります。何よりも、音声記録によって、あのころ文字で想像するしかなかったものが、大友かのえさんという実際の語り手の声で、場所や時間をこえて届いてくるようです。
「ー こんで よんつこ さけたどやあ」。かのえさんの話す北の訛りが耳に心地いい。こどものころに夢中になって読み耽ったあの方言や昔話が、音になって私の中に入ってくる。時折、語りの後ろからは振り子時計の鐘の音が聞こえ、語りの中には採訪者の頷きや笑い声が響きます。
生活の場で採られた生の語りの記録は、その場の空気までも運んでくるのでしょう。
目を瞑れば、畳に座って、かのえさんの前で昔話を楽しんでいる私がいます。

(イラスト:工藤夏海)
*みやぎ民話の会の団体から、有志の会員が「民話 声の図書室」プロジェクトに取り組んでいます。
『大崎市三本木の大友かのえの語り[1]〜[6]』(CD)はせんだいメディアテーク2階映像音響ライブラリーにて視聴できるほか、貸出もおこなっています。
https://www.smt.jp/library/av/
佐々木由紀(せんだいメディアテーク 企画・活動支援室)