2023
03 02
メディアテーク開館
仙台市民図書館開館
コラム 2026年09月01日更新
Dig log 001:映像「伊東豊雄講演会『メディアテークは、なにを目指していたか』」
せんだいメディアテークが所蔵・公開している写真や映像、音声、読み物などから、当館スタッフが独自の視点でとりあげて紹介するコラムをはじめます。タイトルは「Dig log」(ディグログ)。資料を掘り起こし・掘り下げ(dig)、その記録(log)として発信していきます。
第1回目となる今回は、映像資料「伊東豊雄講演会『メディアテークは、なにを目指していたか』」をご紹介します。この映像は2020年1月26日にメディアテーク1階オープンスクエアで行われた、メディアテーク設計者の伊東豊雄氏と館長(収録当時)の鷲田清一氏が「メディアテークはなにを目指していたか」という問いを軸に語った記録です。メディアテーク2階映像音響ライブラリーに所蔵されているDVDやYouTubeチャンネル「せんだいメディアテーク・オンライン」にてご視聴いただけます。

この日は、二部構成になっていました。第一部では設計者である伊東豊雄氏による講演です。設計コンペティションの段階から常に問い続けられてきた「メディアテークはなにを目指していたか」ということ、またその問いを下敷きに空間設計に実際にどのように携わったかということが設計者の視点から事細かに語られます。第二部では伊東豊雄氏と鷲田清一氏の対談にうつります。公共施設においては特異な建築構造ともいえるメディアテークという場が、開館から今日に至るまで利用者の方々に実際にどんな影響をもたらしてきたのかが語られます。
講演ではメディアテークの壁の少なさについて繰り返し言及されます。壁が少ないことはアクセシビリティの観点からも重要ですが、それだけではありません。人と人とを仕切る壁がないことによって、普段は関わらないような人やコミュニティと「出会ってしまう」、話が「聞こえてきてしまう」、偶然性に開かれた場になり得ます。アルゴリズムの発達によって日々摂取する情報やコンテンツが自分好みに満たされていく今、自分の興味・関心の外にあるものと邂逅することは困難です。そんな時代だからこそ多彩な文化や他者と思いがけず出会うことができるメディアテークという場の存在は貴重で、そこでの体験はより大切なように思います。
私自身は今年の7月にメディアテークに入職したばかりですが、壁が少ないことの効果を身に染みて感じたことが既に多々あります。例えば、7階オフィスの中で仕事をしている最中、外側のスタジオでの声が時折耳に入ってきます。ある日、3分間でおすすめの映画を紹介する「せんだいシネバトル」というイベントがあった際に、その熱量あるプレゼンの声が聞こえ、思わず私は少しばかり手を止めて聞き入っていました。「業務への集中力が欠如しているのではないか?」というのはさておき、ふとしたときに、思いがけない情報と出会うことがある。そんな機会がここメディアテークでは利用者、職員問わず訪れるということがわかった一つの貴重な体験でした。
メディアテークという場は利用者の方々によって日々作られ、絶えず変化していく場です。開館から四半世紀が経った今、設計段階から脈々と受け継がれてきた「メディアテークはなにを目指していたか」という問いに本映像を通じて触れることによって、メディアテークで過ごす時間がより一層豊かなものとなるための一助になれば幸いです。
鎌田泰平(せんだいメディアテーク 企画・活動支援室)